こんにちは
私たちは、食べるとき、会話をするとき、あくびをするときなど1日の間で何回もお口を開けたり閉めたりします。
お口を開けたり閉めたりできるのは、顎の関節やその周囲の筋肉の働きのおかげなのですが、中には”お口を動かすと痛くなる””お口が開けにくくなる”という方がいらっしゃいます。
こうした症状を引き起こすのが、顎関節症という病気です。
お口の動きの良し悪しは、日常生活にもとても関係しています。
そこで今回は、顎関節症という病気についてお話しします。
顎関節症とは
顎関節症とは、お口を開けたり閉めたりするときに、顎の関節や筋肉が痛くなったり、動かしにくくなったりする病気です。
顎の痛みや動かしにくさだけでなく、音がなったり、頭が痛くなったり、肩こりがしたりすることもあります。
日本人の2人に1人が、一生のうちに何らかの顎関節症の症状を経験すると言われており、顎関節症はとても身近な病気といえます。
顎関節症の原因
顎関節症の原因はとても多いので、ここでは代表的なものだけ挙げさせていただきます。
くせ
顎関節症の原因の中でも多いのが、くせです。
歯ぎしりや食いしばりなどの噛みしめのくせや、頬杖、顎を左右に動かすくせ、スマホを長時間操作するなど、日常のいろいろなくせが顎関節症の引き金となります。
食生活
硬いものを好んで食べる、右側だけ、もしくは左側だけで食べ物を噛む、ガムを好んで噛むなど、食生活も顎関節症に関係しています。
スポーツ
スキューバダイビングのように何かをくわえながら行うスポーツや、ラグビーやボクシングなど顎を打つようなスポーツも顎関節症を引き起こす要因のひとつです。
音楽
吹奏楽などの楽器演奏も、顎関節症の原因になります。
ケガ
交通事故や転倒など、顎の骨をしたたかに打ち付けことも、顎関節症を引き起こします。
顎関節症の症状
顎関節症の症状は、”痛み””動かしにくさ””音”の3つが代表的です。
症状によっては、食事や会話がしづらくなるなど、日常生活に影響が出ることもあります。
お口を開け閉めすると痛い
お口を開け閉めするときの痛みは、顎関節症の代表的な症状です。
顎関節部分の痛みと、顎を動かすための筋肉の痛みに分けられます。
関節部分の痛みは痛みの範囲は狭いのですが、筋肉の痛みの場合は、こめかみやエラの部分など範囲が広いのが特徴です。
痛みが強い場合、硬いものが食べられなくなることもあります。
お口が開けにくい
顎の動きが悪くなると、お口が開けにくくなります。
顎関節症でない場合は、指を縦にして2.5~3本以上の幅くらいは普通にお口を開けることができますが、顎の動きが悪くなると指1本分くらいしか開かなくなる人もいます。
大きくお口が開けられなくなると、大きな食べ物が食べにくくなってしまいます。
お口を開け閉めすると音がする
お口を開け閉めするときに音がするのも、顎関節症の症状のひとつです。
顎関節は耳の前にあるので、動かすたびに音がなるとなると、とても気になってしまいます。
開け閉めするときの音の大きさも大きい人もいればそうでない人もいます。
中には、近くにいる人に聞こえるほど大きな音が出ることもあります。
顎関節症の治療法
現在の顎関節症の治療法は、可逆的(元の状態に戻すことができる)な治療法が第一選択となります。
ここにあげる方法を単独で行うこともあれば、複数組み合わせて行うこともあります。
運動療法
運動療法は、顎関節や筋肉などの動きをほぐすことで顎の動きを改善させて、痛みや動かしにくさを解消することを目的に行われます。
このため、顎のストレッチともよばれます。
”単にまっすぐ大きく開ける”方法から、”下顎を前方へずらしてから大きくお口を開ける”方法まで、さまざまな方法があります。
薬物療法
顎を動かすときの痛みに対しては、薬を使った治療も行われます。
消炎鎮痛剤、いわゆる痛み止めの薬だけでなく、筋肉の痛みに対しては、筋弛緩剤という筋肉をほぐす薬なども使われます。
精神的な緊張や不安感から顎関節症を引き起こされたと考えられる場合は、抗不安薬などの精神的な働きのある薬を処方することもあります。
顎関節受動術
顎関節には、関節を構成する骨と骨の間に関節円板という軟らかい組織が挟まっています。
関節円板が顎の動きに合わせた適切な動きができなくなると、顎の動きが悪くなってしまいます。
顎関節受動術は、関節炎板のずれを解消し、顎の動きにくさを解消するために行われます。
マニピュレーション療法という言い方をすることもあります。
マウスピース療法
マウスピースを上顎の歯、もしくは下顎の歯に装着して、噛み合わせを調整することで顎の位置を正しい位置に戻し、痛みや動かしにくさを解消します。
症状によって、軟らかいマウスピースと硬いマウスピースを使い分けます。
なお、マウスピースとは言わず、スプリント療法という言い方をすることもありますが、どちらも同じ治療法です。
低周波治療法
顎の筋肉に対する低周波治療法もあります。
これは、マイオモニターという器械を使う治療法で、顎を動かす筋肉に電気的な刺激を20分ほど与えることで、筋肉の強張りを和らげます。
顎の筋肉にリラクゼーション効果をもたらします。
治療の必要のない顎関節症
顎関節症の中には、治療の必要性のないタイプもあります。
それは、症状が”音がなる”だけという場合です。
お口を開けたり閉めたりするたびに音がなるとなると、耳の前で音がなるわけですから、たいへん煩わしいものです。
しかし、”お口が開けにくい””痛みがある”などの音以外の症状がない場合は、特に治療の必要はないとされており、経過観察となります。
まとめ
今回は、顎関節症についてお話しさせていただきました。
顎関節症は、
①お口を開け閉めするときの痛み
②お口を開け閉めしにくくなる
③お口を開け閉めするときの音
が代表的な症状です。
治療法は
①運動療法
②薬物療法
③顎関節受動術
④マウスピース療法
⑤低周波治療法
などがあります。
顎関節症は多くの場合、一時的な症状にとどまり、自然に治ります。
しかし、顎関節症は長引くと、お口が開けにくいのが治らなくなることもあります。
反対に、早めに治療に取り組むと、それだけ治りも早いです。
したがって、自然に治ることもあるからと放置しないで、歯科医院や病院歯科などを受診する方が良いです。
顎関節症の診断や治療には専門知識が欠かせません。
当院は、専門知識に加え、長年の治療経験もありますので、顎関節症でお悩みの方は当院に是非おこしください。