皆さんは歯周病について、どんなイメージをお持ちですか?テレビや新聞・本などで歯周病に関する記事を目にする機会も多いですよね。
歯周病は日本において、成人の罹患率が非常に高い病気です。
お口は身体の入り口です。近年、歯周病は様々な全身疾患に影響を及ぼすことがわかっています。
今回は歯周病が心臓病に及ぼす影響についてご説明します!
目次
◯歯周病はどのような病気か
◆原因
◆症状
◯歯周病が影響を与える心臓病
◆心筋梗塞・狭心症
◆感染性心内膜炎
◯歯周病と心臓病の関連
◆歯周病により口腔内で炎症が生じる
◆口腔内の細菌や炎症物質が動脈硬化を促進
◯歯周病の予防方法
◯まとめ
◯歯周病はどのような病気か
歯周病はお口のなかの細菌が原因となり引き起こされる炎症性疾患で、歯の周りの歯ぐきや、歯を支える周りの骨などが溶けてしまう病気です。
◆原因
お口の中には400~700種類ものたくさんの細菌がいます。その中には歯周病を引き起こす、歯周病原細菌といわれる細菌がいます。
歯の周りのネバネバとした歯垢(プラーク)は細菌の塊で、プラーク1mgの中におよそ10億個もの細菌が生息していると言われています。歯磨きですべてのプラークを除去することは難しく、除去しきれないプラークの中の細菌が歯周ポケットの中に侵入します。
それらの細菌が原因となり歯ぐきの炎症を引き起こし、歯周病が始まります。
◆症状
歯周病の初期は歯の周りの歯ぐきに限局した炎症であり痛みなどの自覚症状は少ないですが、歯磨きの時に歯肉から出血したり、歯ぐきが腫れた感じや浮いた感じがするといった症状が出る場合があります。
歯周病が進行していくと、歯ぐきが下がり歯が長くなったように見えたり、歯と歯の間に物が詰まりやすくなったりします。
冷たいものなどで歯が染みる知覚過敏の症状が出る場合もあります。
重度の歯周病になると歯がぐらぐらしたり、歯ぐきから膿が出たり強い痛みを感じたりといった症状が出てきます。
◯歯周病が影響を与える心臓病
◆心筋梗塞・狭心症
心臓病の中でも、最も多い病気であり命に係わるのが狭心症と心筋梗塞です。この二つを合わせて虚血性心疾患と呼ばれます。
心臓は全身に血液を送るポンプの働きをする臓器です。
心臓は心筋と呼ばれる筋肉細胞でできており、この心筋に酸素や栄養を補給するために心臓の周りは冠動脈と呼ばれる血管が張り巡らされています。
この冠動脈が詰まった状態が心筋梗塞です。冠動脈が詰まると、詰まった先にある心筋は酸素や栄養が行き届かず、壊死してしまいます。
狭心症も、心筋梗塞同様に冠動脈が詰まって酸素や栄養が十分に心筋に届かなくなった状態です。心筋梗塞との違いは、完全に詰まったわけではなく血管が細く狭窄して十分な血流が流れない状態です。
心筋梗塞、狭心症の主な原因は動脈硬化です。
高血圧や高脂血症など、様々な要因で血管の柔軟性がなくなり固くなった状態が動脈硬化です。動脈硬化により、血管壁が厚くなり血管が細くなることで血流が悪くなります。
◆感染性心内膜炎
感染性心内膜炎は、血液によって運ばれた細菌が心臓の内側の膜や弁の膜に付着し炎症を起こした状態です。
口腔内が歯周病で炎症を起こしていると、歯磨きなどの刺激で出血しやすく歯周病源細菌が血流にのって心臓で炎症を引き起こすことが知られています。
それほど頻度の高い病気ではありませんが、先天性の歯周病や心臓弁膜症の既往のあるかたは要注意です。
◯歯周病と心臓病の関連
◆歯周病により口腔内で炎症が生じる
歯周病が進むと、歯肉で炎症が生じて歯肉から出血、腫れなどの症状が出ます。歯周病源細菌は歯周ポケットの中に入り込み、どんどん歯の周りの組織を破壊します。
歯周病はお口の中で常に炎症が続いている状態なのです。
◆口腔内の細菌や炎症物質が動脈硬化を促進
歯周病源細菌や炎症によって出てくる毒性物質が、歯肉の血管から全身に入り心臓にたどり着きます。
これにより心臓の血管壁に炎症を起こし、動脈硬化が進んでしまうのです。
研究では、動脈硬化を起こした血管を調べると、歯周病源細菌が見つかることがわかっています。
アメリカでの報告では、60歳未満で歯周病による骨の吸収が重度な人は、そうでない人に比べて2.48倍心筋梗塞が発症しやすかった。とされています。
◯歯周病の予防方法
歯周病の予防は、日々の歯磨きが最も重要です。
歯の周りにプラークが付着しプラーク中の細菌が毒素を出すことで、歯ぐきが腫れて歯周ポケットが深くなっていきます。
歯周ポケットが深くなると、歯ブラシでプラークを除去することが難しくなり、さらに炎症が広がります。
歯並びやお口の中の状態によって、適切な歯磨きの仕方や歯ブラシの選び方なども変わります。
まずは歯科医院でしっかりセルフケアの方法を学びましょう!
歯石になった汚れなど、日々の歯磨きで難しい汚れは歯科医院でのプロケアで除去することで健康なお口の環境を保つことができます。
◯まとめ
お口は全身の入り口です。
最近では、歯周病は心臓病だけでなく脳梗塞や糖尿病、低体重児出産・早産、骨粗しょう症など様々な疾患に悪影響を与えることが知られています。
胃や腸の中をきれいにしようと思っても、物理的に外から触ることはできません。
お口の中はご自身で管理し、きれいに保てる唯一の臓器です。
歯周病を予防するには日々のセルフケアと歯科医院でのプロケアが大切です。
是非、健康に長生きするために歯周病を予防しましょう!