年齢を重ねるごとに口の中の状態が変わってきていませんか?
お口の役割は食事をして栄養を摂るのはもちろん、会話や笑顔など日常的なコミュニケーションにも関与しています。口の健康を保つことで自分に自信をつけ、社交的な生活を送るきっかけになります。
さらに口の中の病気は全身にも影響を与えます。口のトラブルが減少すれば、生活の質を向上させる助けにもなります。
今日はいつまでも元気でいてほしい高齢者のお口のケアについてお話します。
目次
◯高齢者の口の中の変化とは
◆歯周病の進行
◆むし歯の進行
◆歯を失い人工の歯が入っている
◆ドライマウス
◆嚥下障害
◯高齢者のお口のケア
◆準備するもの
◆お口のケアをするときのポジション
◆手順
◯口腔リハビリテーション
◆食事摂取や飲み込み方のトレーニング
◆口腔筋のトレーニング
◆入れ歯やお口の中の管理
◆口腔機能の総合的な評価
◯まとめ
◯高齢者のお口の中の変化とは
高齢者のお口の健康は時に見過ごされがちですが、加齢に伴い歯周病は進行し、口の中は乾燥するようになり、食べづらさや飲み込みにくさを感じるようになります。
加齢に伴う高齢者のお口の変化について一つ一つお話します。
◆歯周病の進行
歯周病は歯ぐきや歯の周りの組織の炎症であり、歯を失う原因となります。
歯周病は治療を行い炎症が治まっても、歯を支える骨は溶けたら元に戻りません。
そのため、年齢を重ねるごとに歯ぐきが下がっていきます。
歯ぐきが下がれば歯と歯の間の隙間が大きくなったり、歯が長くなったりして汚れを落とすことが難しくなり、さらに歯周病が進行し、歯を失う原因となります。
さらに歯周病は心血管疾患(心臓病、動脈硬化など)、糖尿病、関節リウマチ、呼吸器疾患(慢性閉塞性肺疾患(COPD)や肺炎など)との関連性も指摘されているため注意が必要です。
◆むし歯の進行
歯周病が進行し、歯の根っこが露出すると、歯の根はむし歯になりやすいためむし歯が早く進行します。
また、甘いものをよく食べるなど食生活の乱れによりむし歯はさらに進行します。
◆歯を失い人工の歯が入っている
歯を失い、入れ歯やインプラントが入っているとそれらを特別な方法でケアする必要があります。
不適切な方法で管理をすれば人工の歯が壊れたり、自分の歯を失ったり、雑菌の温床になる場合があります。
◆ドライマウス(口腔乾燥症)
加齢や飲んでいる薬剤により、ドライマウスの症状が現れることがあります。
ドライマウスは唾液の不足により口の中が乾燥する状態で、歯周病やむし歯のリスクを増加させ、飲み込みづらくなるなど食事に影響を与えることがあります。
◆嚥下障害
嚥下障害とは、食べ物や液体を嚥下する(飲み込む)際に生じる障害で、飲み込みがうまくいかなくなる状態です。
加齢による筋力の低下、神経系の障害、認知機能の低下、特定の疾患(脳卒中、パーキンソン病、ALSなど)などが関与することがあります。飲み込みがうまくいかなければ、唾液や食べ物が細菌と一緒に気管に入り炎症を起こす「誤嚥性肺炎」のリスクが高まります。
◯高齢者のお口のケア
適切なお口のケアは、全身の健康に関わる重要な要素です。お口の中はプライベートな場所です。誰もが触られるのを嫌がりますが、歯医者で口の中の状態を診てもらい、介助が必要であれば介助させてもらいましょう。
◆準備するもの
・歯ブラシ
・歯間ブラシやフロス
・スポンジブラシ
・舌クリーナー
・口腔湿潤ジェルやマウスウォッシュ
・入れ歯ブラシや入れ歯洗浄剤
◆お口のケアをするときのポジション
お口のケアの介助において、歯みがきされる方の姿勢は重要です。正しいポジションをとれば、効果的かつ快適にケアすることができます。
▶︎歯みがきをされる方のポジション
椅子や車椅子に座っている場合は頭や背中をささえるためにクッションを置きます。ベッドで寝ている場合は、頭をやや起こします。
▶︎歯みがきをする方のポジション
介助者の腰や背中への負担がないような姿勢を心がけるため、可能であればベッドや椅子の高さを調節します。
十分な明るさの照明を用意し、口の中をよく見ることができるようにします。
◆手順
①まずはお互いリラックスするようコミュニケーションを取ります。
②取り外し可能な歯があれば取り外します。
③お口の中を観察し、乾燥しているようであればジェルやマウスウォッシュを使って汚れをふやかして浮かせます。
④歯ブラシで歯の表面の汚れを落とします。
⑤歯間ブラシやフロスで歯と歯の間の汚れを落とします。
⑥舌ブラシで舌の表面の汚れを優しく取ります。
⑦うがいができなければ、スポンジブラシで拭き取ります。
⑧入れ歯をブラシで磨き、洗浄剤につけます。
◯口腔リハビリテーション
口腔リハビリテーションは、口の機能の回復や向上を目指すトレーニングです。
様々な職種の専門家が口の状態を評価し、必要なリハビリテーションを行います。
リハビリテーションの一部を紹介します。
◆食事摂取や飲み込み方のトレーニング
言語聴覚士やリハビリテーションの専門家が飲み込みのトレーニングを行います。
◆口腔筋のトレーニング
お口の周囲の筋肉を強化するためのトレーニングです。
◆入れ歯やお口の中の管理
入れ歯の適切な使用とお口の中の管理も口腔リハビリテーションの一環です。入れ歯が合っているかどうかの確認や、口の中のクリーニングや治療が含まれます。
◆口腔機能の総合的な評価
口腔リハビリテーションは、患者の口腔機能に関する総合的な評価とそれに基づいた計画を立てます。口腔リハビリテーションは、個々の患者の状態やニーズに基づいて個別に設計されます。
◯まとめ
高齢者のお口のケアは通常の口の中を清潔に保つケアに加え、衰えた筋肉のトレーニングを行ったり、乾燥した口の中に合わせたケアを行う必要があります。
加齢により刻々と変化する口の中の状態は自分でも気づかずに進んでいる場合があります。特別困ったことがなくても歯医者に行って口の中を評価してもらい、その状態に合ったケアを行うことが健康に長生きするためにも大切です。