自然に治る虫歯があるって本当?
一度できた虫歯が自然に治ることはあるのでしょうか?
虫歯といえば、一般的に「虫歯の部分を削って詰める」ものと思っている方がほとんどだと思います。
しかし、ある条件を満たした場合には、歯が「自然に治る」こともあります。
ここでいう歯が「自然に治る」というのは、歯の「再石灰化」というのを意味し、厳密にいうと歯が「修復されている」状態を表しています。
虫歯には初期虫歯と呼ばれるできたばかりの虫歯から、歯に穴があき、冷たいものや温かいものがしみる症状がある中等度、重度の虫歯までその程度はさまざまです。
さらにお口の中の唾液の成分や細菌の状況にも個人差があります。
ではこのような状況下で、どういった条件だと歯の修復、再石灰化が起きて自然に治っていくのでしょうか。
また、今回は、虫歯ができる仕組みや歯の再石灰化がどのように起こるのか、そしてさらに虫歯予防についても、知っていただきたいポイントをお話していこうと思います。
虫歯ができる仕組みとは?
お口の中には元々細菌がいるものですが、食べ物の残りかすなどが歯に付着したままになっていると、細菌はその残りかすを食べ、酸を出すようになります。
この酸によって歯が溶かされ、虫歯ができるという仕組みです。
そして、虫歯にはC0、C1、C2、C3、C4といった進行具合をあらわす段階があり、数字が増えるに従って歯が溶かされる程度が大きくなり、症状も出てくるようになります。
この段階の中で、C0というのは、初期虫歯と呼ばれます。
歯に穴があいたりせず、虫歯の細菌によって出される酸によって、歯の表面であるエナメル質からカルシウムやリンなどのミネラルが溶けだした「脱灰」という状態をいいます。
歯を削ったりすることなく「自然に歯が治る」ことを期待する場合、このC0で虫歯の進行がとどまっていることが条件です。
これがC1以上進み、痛みが出てきたり、歯に実質欠損と呼ばれる穴があいた状態になったりしている場合は、虫歯を削って詰める必要が出てくるので「自然に歯が治る」ことはありません。
よく「痛みがなくなったから虫歯が治ったかも」と仰る方がいらっしゃいますが、症状が出ている時点で、この虫歯は自然に治ることはないものであり、早めに治療する必要があります。
では、この具体的に「自然に治る」とは、歯にどういったことが起こっているのか、について見ていきましょう。
フッ素による「再石灰化」
上でお話したように、初期虫歯のC0の段階は、まだ歯に穴があいているわけではなく、エナメル質表層のミネラルが溶けだしただけです。
このC0の状態を放置せずに、溶けだしてしまったミネラルを積極的に補ってやると、脱灰したエナメル質は修復され、再生することができます。
これを「再石灰化」といいます。
いわゆる虫歯が「自然に治る」時、この再石灰化が起きているといえます。
そしてここで大切なのが、こういった再石灰化を促すのに欠かせない重要な成分であるフッ素です。
このフッ素には再石灰化だけでなく、虫歯の予防に繋がる重要な役割が他にもあります。
フッ素の役割とは?
歯科医院では、患者様とお話するときは分かりやすく「フッ素」と呼んでいますが、正しくは「フッ化物」といい、イオン化された状態で作用します。
このフッ素の主な役割は以下の3つです。
菌の繁殖を抑える
フッ素はお口の中のプラークに入り込むと細菌の酸を作り出す機能を阻害します。
これによって虫歯の原因菌の増殖を抑えることができ、虫歯予防につながります。
歯の質を強化
歯はハイドロキシアパタイトとよばれる成分で出来ていますが、フッ素が働くと、フルオロアパタイトと呼ばれる成分を作り出し、これが歯の質を強化します。
エナメル質の修復を促進
上でお話したような、エナメル質の修復、再石灰化を促進させます。
このように、フッ素は脱灰した歯を修復、歯質を強くすると同時に、虫歯リスクも下げる役割があります。
虫歯予防にフッ素を利用したケアを
ここまでのお話で、フッ素は虫歯予防と初期虫歯の再石灰化に非常に重要な成分であることがお分かりいただけたかと思います。
今回は、効果的なフッ素を利用する方法について簡単にご紹介します。
ホームケア
最近では、虫歯予防のオーラルケア商品などにはほぼフッ素が配合されており、ご自宅でも毎日のブラッシングやうがいで効果的に予防ができるようになっています。
フッ素濃度を心配される方もいらっしゃいますが、通常の適正量の使用ではまず問題ありません。
また、なるべく長い時間お口の中にフッ素をとどまらせた方が虫歯予防効果があります。できればブラッシングの後は、うがいをしすぎないようにすることをお勧めします。
一方で、ブラッシング後にお口の中をスッキリさせたい方は、市販のデンタルリンスを使用するのもいいかもしれません。
プロフェッショナルケア
歯科医院で行われる、歯科における専門家である歯科衛生士、歯科医師によるオーラルケアでは、自分では把握できてない虫歯リスクが高い場所などをチェックしてもらうことができます。
そしてケアでは自分では行き届かない場所もお掃除してくれるとともに、虫歯予防として、ホームケアではできない、高濃度のフッ素を歯に塗布する処置が行われます。
このように、ホームケアと合わせて定期的にプロフェッショナルケアを受けることで効果的な虫歯予防ができます。
気になる虫歯は必ず歯科医院でチェックを
ここまで虫歯のできる仕組みや、再石灰化やフッ素予防についてお話してきましたがいかがでしたでしょうか。
冒頭にもお話したように、虫歯の中でも初期虫歯と呼ばれるものは、フッ素による積極的なオーラルケアを行うことで再石灰化を促し、治すことができる場合があります。
ただ、ここで注意していただきたいのが、初期虫歯かどうかの診断は歯科医院で受けていただきたいということです。
虫歯はその入口は小さくても歯の中で広がっていることがあり、見た目には分かりづらく、レントゲン撮影が必要になることもあります。
また、削って詰めるといった治療が必要なケースの場合、再石灰化で治ることはなく、時間が経つにつれてさらに進行していく可能性もあります。
こういったことから、もし今虫歯かどうか気になる部分がある方は、ぜひ一度歯科医院でチェックしてもらうことをおすすめします。
一方で、今回お話したフッ素による虫歯予防は今からでもすぐはじめられるものです。
是非今回の記事も参考に、健康な歯を維持するためにオーラルケアをご自身でも積極的に進めていただければと思います。