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2022.11.26 【虫歯がどこまで進んだら、神経をとらなければいけないの?】

「歯の神経を取りましょう」
このようなことを言われたことがある方も多いのではないでしょうか。
歯の神経を取る原因はさまざまですが、最も多い原因として「虫歯」が挙げられます。

では、どのくらい虫歯が進行したら、神経を取らなくてはいけないのか。
また、その際の治療方法はどのようなものがあるかについても見ていきましょう。

目次
1.歯の構造
2.どの程度の虫歯で神経を取る処置が必要となるのか
3.抜髄の治療とは
4.神経をとると、歯はどうなるの?
5.まとめ

1.歯の構造

まずは、歯の構造を簡単にみていきましょう。
歯は、歯肉の上にある歯の頭の部分(歯冠(しかん))と、歯肉の中に埋まっている歯根(しこん)から構成されています。
歯冠の表面はとても硬いエナメル質という組織で覆われており、このエナメル質が外からの力や刺激、細菌の侵入から歯を守ってくれます。
その内側には象牙質(ぞうげしつ)と呼ばれる組織があり、歯の中心部にある神経へ外からの刺激を伝えています。
歯の中心部には歯髄腔(しずいくう)という、神経の入ったお部屋があります。
この中は、神経の他にも血管や組織液などで満たされており、血管を通じて歯に栄養を運んでいます。
それによって、歯は生きている木のように、強く、しなやかでいられるのです。

2.どの程度の虫歯で神経を取る処置が必要となるのか

では、どの程度の虫歯で歯の神経を取る必要が出てくるのでしょうか。
「虫歯が大きくなった時」と思っていませんか?
実は、とても小さく見える虫歯でも、神経を取らなければいけない場合もあるのです。

虫歯がエナメル質に限局している場合、ほとんど痛みを感じません。
エナメル質には痛みを神経に伝える構造がないからです。

しかし、虫歯が象牙質に到達すると、象牙質は神経に刺激を伝えるので、痛みとして感じます。

その痛みの程度は虫歯の大きさというよりも、深さに比例します。
神経までの距離が近くなればなるほど、痛みを強く感じるのです。
(ただし、ゆっくり進行していく虫歯の場合は、神経を弱らせながら進むために痛みを感じない場合もあります。)

この「痛み」ですが、実は虫歯菌が痛みを直接出しているわけではありません。
歯の表面に穴が空くことによって、外からの刺激が伝わりやすくなることによります。

つまり、歯を守ってくれていたエナメル質がなくなってしまったために、冷たいものや温かいものなどの刺激や、食物が当たったことによる刺激などで痛みを感じるようになるのです。

分厚いコートを着ていれば寒いのも気にならないのに、急にカーディガン1枚になって北風に晒されたら、凍えてしまいますね。

それと似ていることが、お口の中で起こっているのです。

最初は一時的な刺激に対して歯の神経が痛みに反応したり、収まったりを繰り返しています。

しかし、その刺激が長く続くと、神経は炎症を起こして痛みを常に感じるようになります。そうなると、その神経を取ってしまうことでしか痛みを収める方法がなくなってしまうのです。

また、痛みのあるなしに関わらず、虫歯の細菌が神経まで到達してしまった場合も、虫歯菌もろとも神経を取る処置が必要となってきます。

この、神経を取る治療を「抜髄(ばつずい)」といい、抜髄の際には神経と共に歯髄腔内の血管や組織液なども全て除去することになります。

3.抜髄の治療とは

では、歯の神経を取る「抜髄」とはどのようなことをするのか、みていきましょう。

①まず、表面麻酔を行います

表面麻酔はその後に行う浸潤麻酔(注射による麻酔)の針の刺さる痛みを和らげてくれます。

表面麻酔が効いた頃を見計らって、浸潤麻酔を行います。

抜髄の際、あまりに痛みが強い場合は麻酔が効きにくいことがあります。
その際は痛み止めを服用していただき、歯の神経の痛み(炎症)を和らげてから後日治療の続きを行う場合もあります。

②次に、細菌感染がある虫歯の部分を削ってきれいにしていきます

必要に応じて、根の治療中に唾液などが歯の内部に入って再び感染が起こらないように、削ってなくなった部分に一時的な壁を作ったり、ラバーダムと呼ばれるゴム状のシートを歯に被せます。
これによって、治療中の細菌の侵入を阻止します。

③いよいよ、歯の神経を取り除いていきます

歯の神経が入っている歯髄腔は、先端にいくにしたがって、どんどん細くなる、洞窟のような場所です。
ここに、ギザギザのついた針金状の器具を入れて、根の先端まで丁寧に神経およびその周辺組織を取り除いていきます。
歯の神経や血管、組織などがきれいに取り除けたら、今度はその洞窟の内部の形をきれいに整えていきます。
ここでも非常に細く精密な器具を何種類も使用して、ていねいに整えます。
歯髄腔の形によって、また、根の本数によっても治療に必要な回数は変わってきます。

最後に、神経の入っていた空間に細菌が入り込んで増殖することがないよう、お薬で歯髄腔内を緊密に埋めていきます。
これで、抜髄の治療は終了です。
このあとは、上部に歯を被せていく治療に進んでいきます。

4.神経をとると、歯はどうなるの?

神経を取った歯は、一体どうなるのでしょうか。
歯に対する刺激を感じる部分がなくなったことにより、痛みはなくなります。
しかし、血液の流れもなくなってしまったのです。

つまり、枯れてしまった木のような状態です。

生きている木と比べて、枯れ木は折れたり割れたりしやすくなります。
そのために、補強のために土台を根の中に入れたり、歯冠全体を覆うような被せ物の歯を装着したりして対策を取るのです。

また、「痛みを感じない」ということは、再び虫歯になっても気が付かない可能性が高くなります。

歯冠全体を覆う被せ物の歯を入れたとしても、それを支える根の部分は、ご自身の歯です。
再び虫歯にならないよう、今まで以上にしっかり歯磨きを行っていく必要があることを忘れないでください

5.まとめ

・ 歯の構造は、歯冠(しかん)と歯根(しこん)から成り、歯冠の表面は硬いエナメル質で覆われている。

その下には、痛みを歯髄に伝える象牙質(ぞうげしつ)があり、象牙質まで虫歯が到達すると、痛みを感じ始める。
・歯の神経を取ることを抜髄(ばつずい)といい、痛みが続く場合や、歯の神経がある歯髄腔(しずいくう)まで虫歯の細菌感染が進んだ時は、抜髄をしなければいけない。
・抜髄の治療法は、まず虫歯を除去し、歯髄腔の中に針金のような器具を入れて内部の神経などをきれいに取り除く。そして、形を整え、お薬を詰めていく。
・神経を取った歯は、弱くなる。また、痛みも感じないまま虫歯が進行するリスクがあるので、日々のブラッシング及び定期的なメンテナンスが大切である。

歯の神経は、取らずに済むならそれに越したことはありません。
そのほうが、歯が長持ちするからです。
しかし、継続した痛みが出た場合や、神経のある場所まで細菌が入り込んでしまった場合は、速やかに抜髄の治療を行う必要があります。

まずは、抜髄にならないように、虫歯の治療は早めに行うようにしましょう。
抜髄に至ってしまった場合は、治療終了後もその歯を少しでも長持ちさせることが出来るように、毎日のケアと、定期的なメンテナンスを継続していくようにしましょう。