2022.12.14
「知っておきたい!唾液のチカラ」
「知っておきたい!唾液のチカラ」
みなさんの中に、最近口臭が気になる、お口の中がねばつく感じがする、渇いた感じがするという方はいらっしゃいませんか?
もしかしたら、それは唾液の分泌量が減ってきているからかもしれません。
この症状を口腔乾燥症、あるいはドライマウスと呼んだりします。
唾液の分泌が減る原因は、ストレス、加齢、口呼吸、内科的疾患、服薬状況など多岐に渡ります。
中には生理的なものではなく、「シェーングレン症候群」と呼ばれる涙や唾液の分泌が減少する自己免疫疾患による場合もあります。
唾液は、唾液線(お顔周りの耳下腺、顎下腺、舌下腺を三大唾液腺という)とよばれる組織から分泌され、一日の唾液の分泌量は、およそ1.0-1.5ℓといわれます。
そして、この唾液はお口の中を潤す以外にも、身体の免疫含め、全身的な健康にも深く関係しているといわれます。
近年では歯科医院によっては、唾液の分泌状況を調べる検査を実施しているところもあり、唾液の働きや効果は非常に注目されています。
今回はそんな「唾液」について、身体やお口の中での役割、働きについて、少し掘り下げてみようと思います。
唾液の役割はこんなにたくさん!
唾液の役割は以下のようなものがあります。
・粘膜の保護、潤滑
お口の中を潤し、食事の際も食べ物が軟組織、粘膜にあたって傷つくのを防止したり、また食べ物を飲み込む際にスムーズにしたりする役割があります。
・自浄作用
歯やお口の中の細かいすき間や歯間部の汚れ、食べ物などを流す役割があります。
・消化作用
唾液には、β-アミラーゼという消化酵素が含まれます。でんぷんを分解する酵素ですが、食事の際に唾液がたくさん分泌されることで、消化がスムーズに進みます。
さらに、以下のような歯科に関わる役割もあります。
・再石灰化作用
・抗菌作用
・緩衝作用
次の項目で詳しく説明していきましょう。
お口の中での唾液の働き
歯科に関係する唾液の働きについて、主なものを以下にあげてみます。
緩衝・再石灰化作用
虫歯には初期のものから重度まで段階がありますが、初期の前段階も存在します。
歯には、エナメル質と呼ばれる歯の一番外側の非常に硬い組織があります。
虫歯が出来る際、お口の中は、虫歯の原因菌が出す酸によって酸性に傾きます。
この酸性によって、非常に硬いと言われるエナメル質の表面も柔らかくなり、溶け出し穴があくことを虫歯ができる、といいます。
そんな虫歯ですが、「初期の前段階」というのは、まだ完全には溶けだしていません。
再度、元の硬い組織に戻すには、以下の条件が満たされなければなりません。
1、お口の中を酸性から中性にする(緩衝作用)
2、歯にカルシウムなどの成分を与えてあげる(再石灰化)
実は唾液には、酸性に傾いたお口の中を中性にする「緩衝作用」と、成分として「再石灰化」をうながすカルシウムイオンや、リン酸イオンが含まれているのです。
つまり、上記の1.2の条件をともに満たしており、一時的に弱った歯をもう一度強くする働きがあります。
抗菌作用
唾液の中には、リゾチームやぺルオキシダーゼと呼ばれる抗菌成分が含まれており、この抗菌成分によって、口腔内の虫歯の原因菌の増殖を抑え、虫歯を予防します。
唾液の分泌を促すためにできることは?
このように、唾液には非常にたくさんの効果があり、体やお口の健康には欠かせない働きがあることがおわかりいただけたと思います。
ただ、冒頭でお話したように、加齢、ストレスなどによって、唾液の分泌量がどうしても減ってしまうことがあります。
その際に、歯科医院でもよく指導する日常生活で取り入れやすい方法をいくつかご紹介します。
よく噛む
食事の際に、口を良く動かすことで、口腔内の唾液の分泌がスムーズになります。
よく噛むというと一見当たり前のように感じますが、近年は食事内容も欧米化し、パンやパスタなど咀嚼がそこまで必要ない食べ物が多く、噛む回数が減少傾向にあります。
少し歯ごたえがある食事内容に工夫するなど、咀嚼回数を増やすようにすると口周りの動きがよくなります。
口呼吸から鼻呼吸へ
口が常にあいている方は当然口腔内が乾燥しやすく、唾液の分泌が悪くなります。鼻呼吸を意識するようにしましょう。
水分補給
唾液は体の中の水分から生まれます。体自体が水分不足だと唾液の分泌量も減ります。しっかり水分補給をするようにこころがけましょう。
唾液腺マッサージ
唾液を分泌する唾液腺をマッサージする方法です。
主に、大きな唾液腺がある3箇所(耳下腺:耳の前、舌下腺:顎先の後ろの舌の下、顎下腺:下顎の骨の内側の柔らかい部分)を指で優しくマッサージして唾液の分泌を促します。
始めは実感を得られない方もいらっしゃいますが、次第にじわっとお口の中が潤ってくるのを感じるはずです。
特に顎下腺は唾液の分泌の60-70%を占めるため、一番分泌を感じやすいかもしれません。
マッサージは顔周りの緊張も取ることができるため、お口周りの筋肉も動きやすくなります。
唾液のチカラで健康に!
ここまで、唾液について少し掘り下げてお話してきましたが、いかがでしたでしょうか。
唾液のもつチカラは多くあり、お口の中だけでなく、全身の健康の維持にも深い関係があることを知っていただけたと思います。
ただ、冒頭でお話したように、今お口の中のネバツキや口臭が気になっている方の中には生理的なものではなく、シェーングレン症候群のような自己免疫疾患が原因のこともあります。
その場合は、適切な治療をうけることが重要なので注意が必要です。
今回の記事をご覧になって、ご自身の唾液やお口の中の状態について少しでも気になった方はまずは、歯科医院を受診し、今のお口の状態、唾液の状態についてご相談されることをおすすめします。