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2024.5.28 口腔機能低下症

「口腔機能低下症」という言葉を聞いたことがあるでしょうか?
口には食事を噛んだり飲み込んだり、言葉を話したり・・・たくさんの機能があります。口腔機能低下症とは、その名の通り「咀嚼・嚥下・構音・唾液・感覚」といった口の機能が加齢や疾患・障害などの理由で低下している状態のことです。歯科では2018年に口腔機能低下症という病名が保険収載され、健康保険での治療が可能となりました。
まだまだ新しい概念ではありますが、お口の機能の低下はただ食べ物を飲み込みにくくなったり、滑舌が悪くなったりするだけでなく、全身の筋力低下など健康寿命に大きく影響することが知られるようになってきています。
お口の健康を保つことは、全身の健康につながります。
今回は口腔機能低下症とは、どのような病気なのか。その対処方法についてお伝えします!

目次

◯口腔機能低下症とは
◯口腔機能低下症の症状と診断基準
 ◆口腔衛生状態不良
 ◆口腔乾燥
 ◆咬合力低下
 ◆舌口唇運動機能低下
 ◆低舌圧
 ◆咀嚼機能低下
 ◆嚥下機能低下
◯口腔機能低下症を予防・進行させないために
◯まとめ

口腔機能低下症とは

口腔機能低下症とは、お口の機能が低下した状態です。「食べ物が噛みにくい」「飲み込みがしにくい」「むせやすくなった」「滑舌が悪くなった」など様々な症状があげられます。加齢や脳梗塞などの疾患、お口周囲の手術など様々な原因が考えられますが、高齢化とともにお口の機能の低下が近年問題となっています。
口腔機能が低下すると、噛み応えのあるものが食べられなくなり栄養に偏りが生じたり、外出の機会が減り筋力や体力が低下したりするなど全身の健康に影響します。口腔機能の低下は要介護状態になるリスクを高めるのです。
一つ一つの症状は小さなもので、ゆっくりと進行するためご本人もそれほど気にしていなかったり、歳のせいと思っていることが多いですが早めにケアを行っていくことが健康寿命を延ばすために大切です。

口腔機能低下症の症状と診断基準

口腔機能低下症では、7つの評価項目があります。この7つの評価項目のうち、3つ以上あてはまる場合口腔機能低下症と診断されます。

口腔衛生状態不良

お口の中の衛生状態は舌表面の汚れ(舌苔)の付き具合で評価します。唾液の分泌が低下してお口が乾燥したり、舌の動きが悪くなることで舌苔は付きやすくなります。
舌苔は口臭の原因にもなります。

口腔乾燥

高齢になると、お口の乾燥に悩む方も多いです。
お口の乾燥状態を水分量を測る機械で測定したり、ガーゼを噛んだ時の唾液の分泌量を測ることで評価します。
お口が乾燥することで、唾液の自浄作用が働かず口腔内の衛生状態が悪くなったり、食べ物を飲み込みにくくなったり、味覚が感じにくくなったりといった様々な弊害があります。
加齢とともに唾液を作る唾液腺が委縮することも原因の一つですが、普段飲んでいる薬の影響で唾液が減少していることも少なくありません。

咬合力低下

噛む力は機械を使った検査や残っている歯の状態で評価します。しっかり噛めることは、食事を美味しく食べるだけでなく認知症予防などにもつながることがわかっています。
歯が抜けたまま奉仕している方は要注意です。

舌口唇運動機能低下

「パ」「タ」「カ」と発音したときの1秒間当たりの回数を計測して評価します。舌や唇の運動機能低下は、会話や食事に影響します。

低舌圧

機械を使って舌の力を測ります。舌は筋肉の塊であり、筋力が低下すると舌圧は低くなります。低舌圧は飲み込みのしづらさなどに関連します。

咀嚼機能低下

咀嚼機能はグミを噛んだときの状態を評価します。咀嚼機能の低下は食事の片寄りや栄養状態などに影響を与えます。

嚥下機能低下

飲み込みの状態はアンケートによる主観的な評価で行います。
飲み込みの機能低下は普段からむせやすくなったり、誤嚥性肺炎のリスクにもつながります。

口腔機能低下症を予防・進行させないために

口腔機能低下症と診断されても、適切なケアやリハビリを行うことで改善することができます。
むし歯や歯周病、入れ歯が合わないなどの問題がある場合は、まずその治療を受けましょう!特にご自身の残っている歯が少ない方は、入れ歯やインプラントなど適切な治療を行うことで、口腔機能は大きく向上します。
そのうえで舌や唇を動かす運動やお口のマッサージ、飲みこみの練習、食事指導などご自身に合ったケアを行い、定期的にクリニックでチェックを受けることが大切です。

まとめ

お口の機能は全身の健康に影響します!
噛みにくい・飲み込みにくい・話しにくい、など1つ1つは小さな症状で年を取ったから、とあまり気にされない方も少なくありません。しかし段々進行していくうちに食事をとることや会話が難しくなり、外出が減り人と接する機会が減ったり、栄養状態に問題が出てきます。
自分の口で美味しく食事ができ、他の人と楽しくコミュニケーションが取れることはQOL向上に繋がり、健康寿命の延長のために不可欠です!
まずはクリニックでご自身のお口の機能を評価しましょう。
気になることはお気軽にご相談ください。