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2022.8.22 銀歯の時代は終わった??

「今歯科医院で虫歯治療中で、最後の詰め物の種類がどれがいいかわからない」

「銀色の詰め物をやり替えた方がいいと言われたが、症状はないのになぜ?」

「歯科医師から自由診療の白い詰め物が良いと聞いたけど、なぜいいのかわからない」

「同じように咬めるなら保険の銀色の詰め物でいい気がするけど」

このような疑問を持っている方いらっしゃいませんか。

ひと昔前まで、保険診療においては、金銀パラジウム合金と呼ばれるメタルを使用した治療しか選択肢がなく、特に少し大きめの虫歯の場合は、銀色の詰め物によって治療が行われていました。

歯の色に合わせた白い詰め物は自由診療の扱いとなるため、費用の面からも、保険診療が医療の基本である日本ではメタルによる治療が多く選択されたとも言えます。

それが近年では「メタルフリー」が主流になり、保険診療でも白い詰め物や被せものが登場してきました。

自由診療においては、以前からメタルフリーが主でしたが、昨今では審美的にも機能的にもさらに向上した素材が登場し、歯科医師としてもより良いものを、ということで患者様におすすめする機会が増えてきました。

ではなぜ今このようなメタルフリーや白い詰め物・被せものがすすめられるようになったのでしょうか。

今回は、冒頭にあるような疑問点を踏まえ、以下に説明していきましょう。

保険の銀歯をおすすめできない理由

保険の銀歯をおすすめできない理由として、代表的なものを3つあげてみます。

2次カリエス(虫歯)リスクがある

金属なので、力に強くて割れにくいというメリットもありますが、最初はピッタリと歯にフィットしていたものが時間とともに劣化したり、咬み合わせによって変形したりすることがあります。
それによって歯と詰め物の間にすき間が生じてしまい、そのすき間から細菌が侵入し、結局二次的に虫歯ができます。
そしてさらに歯を削ることになってしまいます。

基本的に、歯が長持ちするかどうか、というのは、歯を削る量が大きく関係します。
歯を削る量が増えれば増えるほど、その歯を保存できる期間が短くなって、いわゆる「歯が弱ってしまう」状態になってしまいます。

金属アレルギーリスクがある

銀色の詰め物や歯科の材料に使用される金銀パラジウム合金には、アレルギーを発症しやすい金属が含まれます。

これらは、お口の中で金属がイオン化することで体内に取り込まれやすく、長期間にわたって体内に蓄積していきます。

装着直後に症状が現れなくても、かなり期間が経過してから湿疹などの皮膚炎の症状が出て、調べてみると歯科の金属の詰め物によるアレルギーであったということは珍しくありません。

見た目が悪い

やはりメタルなので、歯の白さには馴染まず、笑ったときに目立ってしまい、見た目が悪いというのは大きなデメリットになります。

白い詰め物・被せものがすすめられる理由

では次に、なぜ、歯科医師が白い詰め物、被せものをおすすめするのか説明していきましょう。

近年、かつて自由診療での扱いがメインだった白い詰め物や被せものが、保険診療でも扱えるようになってきました。
銀色の詰め物のデメリットを考慮すると、こういった流れは患者様にとっても有益だと言えます。

ただ、自由診療と保険診療とでは扱う素材や特徴が異なり、それを加味してご自身に必要なものを選択していく必要があります。

では、同じ白い詰め物・被せものでも保険診療と自由診療では具体的にどのような違いがあるのでしょうか。

「保険診療」の白い詰め物・被せもの

保険治療で使用されるのは、主に強化プラスチック、セラミックとプラスチックを合わせてハイブリッドセラミックと呼ばれるものです。

メリットとしては、既存色から選択することにはなりますが、比較的ご自身の歯の色に近いものが製作可能で、審美的にもメタルと比べると優れています。
また上でお話したメタルのデメリットを排除できるというところで、非常に体にも優しいです。

一方で、デメリットとしては、強度がやや落ちる、変色することがあげられます。
プラスチックが使用されており、強度はセラミックやメタルと比べて落ちます。
そのため、奥歯や咬合力が強くかかりそうな部位には不向きです。
また、時間が経つにつれてやや変色してくるので、場合によってはやり替えが必要になることがあります。

「自由診療」の白い詰め物・被せもの

一般的にオールセラミック治療と呼ばれるものです。

セラミック治療と呼ばれる中にも、その素材にいくつか種類がありますが、いずれも、保険治療のプラスチックを使用したものより、審美的にも強度的にも優れています。

さらに、変形もなく、表面に汚れがつきにくいため、虫歯や歯周病のリスクも軽減できるのも大きなメリットです。

特に、近年では、人工ダイヤモンドと呼ばれる非常に丈夫なジルコニアが多く用いられています。
審美的にも、他のセラミックの素材と組み合わせることでご自身の歯の色に限りなく近づけて作製することも可能で、自然な仕上がりが得られます。

デメリットとして、セラミックは種類によっては割れやすい、というのが一つあげられます。

ただ、ジルコニアという素材が扱われるようになってきたことや、咬み合わせ等を考慮して使用する材料を選択できればそこまで心配はいりませんし、診査の段階で、お口の中の咬み合わせ等の状況の見極めが出来ればけっしてデメリットにはなりません。

まとめ

ここまで保険や自由診療の詰め物・被せものの特徴、それぞれの利点、欠点等についてお話してきましたがいかがでしたでしょうか。

昨今、ただ寿命を延ばすのではなく、QOLを維持し健康的に過ごす「健康寿命」を延ばすことが重視されています。

歯科業界でも生涯にわたって健康な歯を維持することが目標となり、なるべく歯は削らない、1本でも多く残して長持ちさせる、といったスタンスが治療のスタンダードになっています。

「ただ噛めればいい」というだけではなく、健康なお口を長く維持するという長期的な目線で考えていくことが求められているといえます。

こういった背景から、歯科医師がなぜメタルフリー治療やセラミック治療をおすすめするかがおわかりいただけたかと思います。

もし今歯科治療中の方は、今回の記事を参考に、ご自身のお口の中の状況についてかかりつけ医としっかりお話ししていただき、ご自身に合ったベストな治療を選んでいただければと思います。