舌痛症は舌に異常がないにも関わらず、ヒリヒリとした痛みや舌の灼熱感などを感じる疾患です。痛みも一日の間に波があり、舌に異常がないのにどうして痛くなるのか不安になり歯科受診される方も中にはいらっしゃいます。痛みだけでなく舌の乾燥や唾液の違和感などを訴える場合もあります。舌痛症は一次性と二次性に分類されているのでどのような場合分けがされているのかを確認してみましょう。
【目次】
○舌痛症とはなに? こんな症状に思い当たるなら 舌痛症の基本
○舌痛症とはなに? こんな症状に思い当たるなら 他の疾患との鑑別
○舌痛症とはなに? こんな症状に思い当たるなら 治療法
○まとめ
○舌痛症とはなに? こんな症状に思い当たるなら 舌痛症の基本
舌痛症は他の疾患による痛みの可能性が除外された場合に診断されます。これを一次性の舌痛症と呼んでいます。何らかの原因(全身的・局所的)があり、それが舌痛症を引き起こしている場合には二次性の舌痛症と呼んでいます。舌痛症は女性に多く、特に更年期以降の方に多いとされています。一次性の舌痛症の場合には原因が不明であることが多いです。神経障害性疼痛という、いわゆる神経痛の一種として考えられることもあります。様々な原因が考えられており、ストレスや睡眠不足、心身疲労、更年期以降の女性に舌痛症が多いことからホルモンバランスの乱れなどがきっかけとして挙げられます。舌痛症を訴える患者さんには脳の痛みに関連した部位の活動変化が起きているとする発表もあります。しかし、いずれにしても一次性の舌痛症は原因が定かではなく、特効薬や決まった治療方法などがあるわけではありません。症状によって薬や生活指導などにより普段の生活の見直しを行うこともあります。
○舌痛症とはなに? こんな症状に思い当たるなら 他の疾患との鑑別
一次性、二次性の舌痛症には違いがあることを確認した上で、二次性のものを確認してみましょう。全身的な病気や局所的な原因を知っておきましょう。
全身的な疾患の代表例
・糖尿病
・シェーグレン症候群
・貧血
局所的な疾患の代表例
・口腔カンジダ症
・扁平苔癬
・悪習癖
などが挙げられます。
全身的疾患から確認すると、糖尿病は口腔乾燥や免疫不全が起こることにより舌痛症のきっかけになることがあります。口の粘膜や舌が乾燥によって荒れてしまい痛みを伴うことが知られています。シェーグレン症候群は口や目の乾燥を特徴とする自己免疫疾患です。特に女性に多い疾患として知られています。貧血は鉄が欠乏する鉄欠乏貧血、ビタミン12の吸収阻害によって起こる悪性貧血があります。どちらも舌の痛みを伴うことがあり、舌の表面性状が変わることがあります。
局所的な疾患を確認すると、口腔カンジダ症はカンジダと呼ばれるカビの一種がお口の中に多くなることによって起こります。基本的にカンジダは口の中にいるのですが、体の免疫が落ちたり、体調を崩したりするとカンジダが多くなってしまうことで引き起こされます。若い方ではなくお口の清掃状態が悪い高齢の方で時々見ることがあります。粘膜に炎症を起こすので口の中や舌に痛みを感じます。扁平苔癬は粘膜や舌に炎症を起こす疾患です。頬や歯茎、舌の痛みを伴う事があり、その部位に白いレース様の斑ができることが多いです。金属アレルギーの可能性も示唆されています。悪習慣は舌を意識せずに前に出したり、歯に擦り付けたりすることにより舌に痛みを起こしてしまうことがあります。
これらは二次性の舌痛症のため、きっかけとなる疾患の改善により舌痛症の症状も改善される可能性があります。一次性か二次性の舌痛症なのかにより処置方針が変わるので診断が重要になります。
○舌痛症とはなに? こんな症状に思い当たるなら 治療法
舌痛症の種類を確認した上で治療法を確認しましょう。二次性のものであれば原因と思われる疾患の治療が優先になります。一次性の場合には原因が特定されないため慢性疼痛改善のために抗うつ薬などを使用する場合や抗けいれん薬などを用いる場合があります。舌の痛みに対してそれらの薬を使用することに抵抗があるかもしれませんが、治療法の一つとして考えてください。時として、歯科領域での治療が困難な場合には医科との連携や紹介をさせていただく場合もあります。
まとめ
舌痛症には分類があり、それによって治療法が異なってきます。舌に痛みがある場合にはまず原因がどこにあるかを調べることから始めます。舌の痛みは全身的な疾患も関わってくることがあるので、採血を行い血液検査をすることもあります。舌や全身疾患の有無を確認した上で舌痛症の診断を行うので、診断には時間がかかることもあります。治療も一次性の舌痛症の場合には原因がわからないので治療にも時間がかかることが多いです。舌の痛みや違和感などを感じた場合には、歯科医院で確認してもらうことが解決の糸口になるかもしれません。