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2023.6.3 高齢者に増える根面う蝕 原因と治療法

加齢や歯周病に伴い歯の根が見えてくると、歯の表層のエナメル質ではなくセメント質と呼ばれる部位が見えてきます。その部位はエナメル質よりも酸に弱く、露出部位は汚れの付着が多くなりがちです。結果として虫歯を作りやすくなります。無症状で進行することもあり、気づいた時には大きくなってしまっていたということも決して珍しいことではありません。根面う蝕に対する基本知識と治療法や予防について知っていただき、日々の生活に役立ててください。

【目次】

・高齢者に増える根面う蝕 原因と治療法 根面う蝕の原因と基礎知識

・高齢者に増える根面う蝕 原因と治療法 治療法

・高齢者に増える根面う蝕 原因と治療法 予防法

・まとめ

高齢者に増える根面う蝕 原因と治療法 根面う蝕の原因と基礎知識

根面う蝕はその名が示す通り、歯の根の部位にできる虫歯です。歯の根はセメント質という構造で覆われており、歯の頭の白い部位にあるエナメル質よりも酸に弱いことが知られています。若年者は歯根が見える心配はあまりありません。しかし、高齢になるにつれて生理的に歯茎が下がる場合や歯周病に罹患したために歯茎が下がる場合などがあります。すると歯の根(歯根)がみえてきてしまいます。歯根の表面は滑沢ではなく粗造で汚れが停滞しやすく、歯磨きがしにくいという点があります。こうした原因から根面う蝕になってしまいます。根面う蝕は進行しやすいものから、ゆっくり経過をみるものがあります。色は褐色であったり、黒色であったりする場合があり、正常な歯根の色とは違う色になることが多いです。病態により治療方法に差異がでてきます。進行性の虫歯でも、無症状で進む場合もあります。寝たきりの患者さんや認知症の患者さんでは根面う蝕になっている歯が食事の時や歯ぎしりなどの強い力によって歯が折れてしまうことがあります。誤飲や誤嚥のリスクにつながることが知られています。

高齢者に増える根面う蝕 原因と治療法 治療法

根面う蝕は病変の範囲の特定が難しい場合があります。色が変わっている部位を全て取り除くと、神経を取ることに繋がりかねないので慎重に治療を選択する必要性があります。一般的に根面う蝕は歯茎に近い部位や歯茎の下に虫歯が存在することが多いです。虫歯の治療でよく行われるレジン充填治療では唾液や水分が処置中に入ってしまうと失敗してしまいます。根面う蝕はレジン充填が行いにくい場所にあり、治療に困る場面に遭遇します。現在では不用意に歯を削ることをせずに再石灰化を促し、根面う蝕をマネージメントすることが一つの方法として挙げられています。これは日本歯科保存学会が提起しています。削ることによる不利益が多くなるのであれば、むしろ進行を抑制させる、虫歯の活動を低下させることに重きがおかれています。実際の治療方法を確認してみましょう。

治療方法は大別して削って詰める治療と削らずにマネージメントする治療に大別されます。削って詰める治療は一般的な虫歯の治療方法と変わりません。レジン充填やグラスアイオノマー充填というセメントを詰める処置も検討されます。

削らずにマネージメントする方法には

①セルフケア

②プロフェッショナルケア

があります。

①はフッ化物配合歯磨剤の使用とフッ化物配合洗口剤を使用することが挙げられます。②はフッ化ジアンミン銀という薬剤を使用する方法です。フッ化ジアンミン銀はフッ素濃度が高い点で効果的です。これにより活動性の虫歯を非活動性にし、柔らかくなった歯質を固くすることが期待できます。一方で根面う蝕などのう蝕部位に作用させると黒くなることが知られています。黒くなるので審美的な点で劣ります。

高齢者に増える根面う蝕 原因と治療法 予防法

根面う蝕にならないためにどうしたら良いかを確認しましょう。根面う蝕は先にも述べた通り、歯の根が露出することをきっかけとして起こります。残念ながら生理的にも歯茎は下がってしまいますが、歯周病では著しく下がる原因になり得ます。日頃気をつけないといけないことは、やはり歯磨きです。しっかりと汚れが落とせているかも大切ですが、歯茎に必要以上の負荷をかけていないことも重要です。歯茎に余計な力が入っていると歯茎が下がる原因になり得ます。歯磨き方法に自信がない場合は、歯周病や虫歯のチェックも含めて歯科医院で一度確認してもらうようにしましょう。

加えて大切なことはフッ化物の利用です。治療法にも述べていますが、フッ素は予防にも役立ちます。う蝕全般に有効であり、歯質の強化につながります。可能であれば歯の表面にフッ素を停滞させた方が効果的なので、歯磨き後はあまりうがいをしない方が望ましいです。

まとめ

根面う蝕の原因や治療法、予防法について確認してきました。治療については虫歯は必ず削るものと考えていた方にとっては意外だったかもしれません。根面う蝕は一般的な虫歯の治療方法とはまた異なる方法を取ることがあります。年齢を重ねるとどうしても歯茎が下がるのはある程度許容されますが、歯周病などに罹患してしまうのは好ましくない状況です。虫歯の確認や歯周病の状態確認、歯磨きが正しくできているかの確認を含めて定期的に歯科検診されることをお勧めします。