歯科治療がご自宅や施設でも受けられるとご存じですか?
通院するのが難しい場合でもお口の中を診てもらうことができれば安心ですよね。
今回は、訪問歯科診療で歯科医師と歯科衛生士がどんな役割を担い、どんなケアサービスを受けられるかお話していきます。
目次
◯訪問歯科診療とは
◯訪問歯科診療の対象者
◆訪問歯科を利用できる方
◆訪問歯科を利用できない方
◆訪問できる距離
◯訪問歯科診療でできること
◆むし歯治療
◆歯周病治療
◆入れ歯治療
◆お口の機能のリハビリ
◆お口のケアなどの指導
◯訪問歯科診療の保険適応について
◆診察にかかる費用
◆治療にかかる費用
◆指導にかかる費用
◯介護保険での指導
◆歯科医師が行う居宅療養管理指導
◆歯科衛生士が行う居宅療養管理指導
◯まとめ
◯訪問歯科診療とは
訪問歯科診療とは、歯医者へ通うのが難しい方を対象に歯科医師や歯科衛生士が患者さんの寝泊りしている場所(自宅・施設等)を訪れ、歯の治療や口腔ケアを行うことを指します。
歯科治療を受けたりお口の機能の維持管理を行うことで、食べることだけでなく生活の質があがることや、全身の病気とも関連があることが明らかになってきました。歯医者への受診が難しくても治療をあきらめる必要はないのです。
◯訪問歯科診療の対象者
訪問歯科診療は、病気やけがにより在宅で療養を行っているため通院困難な方でないと保険治療の対象となりません。内科等で通院ができている方は対象となりません。
要介護状態区分等の指標だけで判断されるのではなく、歯科医師が患者さんごとに総合的に状態を判断するため一概には言えませんが、訪問歯科診療を利用できる方とできない方の例を紹介します。
◆訪問歯科を利用できる方
病気などにより身体が不自由な方
障害があり、通院が難しい方
寝たきりの方
認知症等により、状況の判断をすることが難しい方
◆訪問歯科を利用できない方
他の医療機関に通院している方
通院できるが行くのが面倒、待ちたくないから等の理由の方
車椅子等で移動し通院が可能な方
◆訪問できる距離
保険の範囲内で訪問歯科診療を受けるには、保険医療機関から半径16km以内の場所と決められています。
◯訪問歯科診療でできること
訪問歯科診療では通常の歯科診療所にあるような治療用の椅子がなく、持っていくことができる機材も制限されます。
また、患者さんの全身状態や体勢により治療が制限されることがあります。
しかし、お口の中の困りごとに対してできる限り対応を行っています。
◆むし歯治療
むし歯が進行すれば痛みが出たり、歯を失う原因となります。
むし歯の進行を遅らせたり、むし歯の穴をうめたりという治療も訪問歯科診療で行うことができます。
◆歯周病治療
歯周病は歯を支える組織の炎症で、歯ぐきが腫れたり、炎症が続けば歯はぐらぐらになって抜けてしまうこともあります。
この炎症の原因は歯についた汚れなので、普段自宅のケアでは落としきれないような歯石や汚れを取って歯周病の治療をすることが訪問歯科診療でも行うことができます。
◆入れ歯治療
現在入れ歯を使っていても、入れ歯が合わなくなったり、新たに歯を失って入れ歯が必要となることがあります。訪問歯科診療でも入れ歯を作ったり、調整したりすることができます。
◆お口の機能のリハビリ
加齢によりお口の周りの筋力が衰えたり、唾液が減少してお口が乾いたりすると飲み込みづらくなったり、飲み込んだものが気管に入ってしまうことがあります。
お口の機能のリハビリでは、食べるために必要な筋肉をトレーニングしたり、唾液を出すマッサージを行ったりして、お口の機能のリハビリを訪問歯科診療で行うことができます。
◆お口のケアなどの指導
お口の中をきれいに保つには、歯みがきをするだけでなく、入れ歯などを清潔に管理したり、口の中の機能に合わせたケアをする必要があります。
細菌の含まれた唾液が気管から肺に入ることで起こる誤嚥性肺炎は、お口のケアを行い口の中の細菌を減らすことも効果的です。
このようなお口のケアも訪問歯科診療で行うことができます。
◯訪問歯科診療の保険適応について
訪問歯科診療は医療保険および介護保険が適用されます。
歯科診療では、「診察にかかる費用」と「治療にかかる費用」と「指導にかかる費用」があります。
◆診察にかかる費用
基本的な診察や訪問診療にかかる費用です。
◆治療にかかる費用
むし歯・歯周病治療や入れ歯の作製・修理など治療にかかる費用です。
◆指導にかかる費用
歯みがきの仕方、入れ歯のお手入れ方法、飲み込みの指導、管理などにかかる費用です。
外来診療の場合、すべてが医療保険の適応となりますが、指導にかかる費用に関しては介護保険が優先して適用されます。
◯介護保険での指導
介護認定を受けている方の居宅に訪問する場合、指導にかかる費用は居宅療養管理指導料となります。
これは、歯科医師や歯科衛生士が患者さんやご家族、ケアマネージャーの方に対して、介護する上でのお口に関する指導や助言を行ったことに対して発生する費用です。
居宅療養管理指導とは歯科医師が行う指導と歯科衛生士が行う指導があります。
◆歯科医師が行う居宅療養管理指導
歯科医師が行う居宅療養管理指導は、継続的に歯科医学的管理を行いお口に関する留意点や介護方法等をケアマネージャーやご家族等に指導や助言を行います。
つまり、口の中の病気の状態はどうなっているのか、入れ歯の状態はどうなのか等を元に介護サービスを受けるにあたっての留意点に関して助言や指導を行います。
◆歯科衛生士が行う居宅療養管理指導
お口の中のケア、歯の磨き方、義歯の洗い方や管理、飲み込みに関する指導等を行い、患者さんやご家族に対してそれに関わる指導や助言を行ないます。
歯科医師の行う医学的管理とは異なり、お口の中の管理に関して指導を行っています。
◯まとめ
訪問歯科診療では、歯科衛生士が単独で訪問することができます。
歯科医師が訪問するときは主に歯科医学的な視点で指導や助言をしたり治療を行いますが、歯科衛生士は介護サービスとしてお口の中を管理・指導をしています。
医療保険と介護保険を利用することで必要なサービスを受け、お口の健康を保つとともに健康寿命を延ばしましょう。