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2024.6.29 訪問歯科とは?〜対象者と訪問エリアについて〜

日本では、外来での歯科受診が70〜74歳をピークとして、その後は急速に減少するといった調査結果があります。
口腔機能の維持管理は、食べることだけでなく全身の健康管理にとても重要です。
高齢になるにつれ、基本的に咀嚼嚥下機能は低下していきます。
残った歯の数も少なくなっていくため、歯科医療を必要とする機会は増えていくはずです。
歯科医院に通えない人にも治療の機会をという考えのもと誕生したのが訪問歯科です。
今回は訪問歯科とはどういったものなのか、その対象者と訪問可能エリアについて解説していきます。

目次

◯訪問歯科とは
 ◆虫歯治療
 ◆入れ歯の治療
 ◆口腔ケア
 ◆摂食嚥下機能のリハビリ 
◯訪問歯科の費用
◯訪問歯科の申し込み方
◯口腔内の環境をよくするメリット
 ◆様々な全身疾患や認知症の予防につながる
 ◆誤嚥性肺炎を予防する
 ◆生活の質(QOL)を維持する
◯訪問歯科の対象者
◯訪問可能エリア

訪問歯科とは

訪問歯科とは、歯科医師や歯科衛生士が自宅や介護施設を訪問して診療を行うことです。
訪問歯科は、治療・口腔ケア・リハビリの3つを大きな柱とします。
訪問診療用の歯科器材を持ち込み、入れ歯や簡単なむし歯処置などの治療や、口腔ケアを行うことが可能です。
リハビリとは、主に摂食嚥下に関するもので、お口から食事を取るためのリハビリを行います。


具体的には以下のようなことができます。

むし歯治療

・むし歯を削り、詰めて治す治療
・むし歯が深く神経にまで達している場合に、痛みが出ないようにする
・むし歯が大きく歯が崩壊していて、抜歯を行う

入れ歯の治療

・入れ歯が合わない場合の調整
・新しく入れ歯を作る
・壊れた入れ歯の修理

口腔ケア

・専用の器械を使用して歯石の除去を行う
・口腔内清掃におけるプロフェッショナルケアの実施
・口腔内ケア

摂食嚥下機能のリハビリ

・摂食嚥下に関わる筋肉のリハビリ
・個人の状況に見合った食事の形態の見直し
・安全な食事の取り方の指導

訪問歯科の費用

訪問歯科は健康保険で受けることができます。年齢と収入によって負担割合が変わる点は、通常の治療費と同じです。
しかし、訪問歯科の場合は、治療費のほかに訪問歯科加算がかかります。
訪問歯科を行う歯科医院によっては、交通費(またはそれに該当する費用)がかかる場合もあります。
要介護認定を受けている人は居宅療養管理費用(介護保険適用)も必要となります。

訪問歯科の申し込み方

訪問歯科を申し込む方法は大きく分けて以下の3つになります。
・かかりつけの歯科医院に相談してみる
・地域包括支援センターや市区町村の保健センターに相談する
・主治医や介護職員などに相談する
・訪問歯科を斡旋している企業に連絡する

口腔内の環境をよくするメリット

口腔内の環境をよくすることには、以下のメリットがあります。
・様々な全身疾患や認知症の予防につながる
・誤嚥性肺炎を予防する
・生活の質(QOL)を維持する

様々な全身疾患や認知症の予防につながる

口腔内環境は、全身の健康に大きく影響します。
特に歯周病と全身疾患の関連は有名です。
脳血管疾患や心臓疾患、そして糖尿病は歯周病と深く関わっています。
また、アルツハイマー病の悪化原因の1つに歯周病菌が関与しているといわれています。

誤嚥性肺炎を予防する

誤嚥性肺炎とは、口腔内の細菌が食べ物や唾液とともに誤って気管を通り肺に入り起こる肺炎のことです。
誤嚥性肺炎は、日本人の死因の第6位です。
口腔内をきれいにすることで、誤嚥性肺炎の予防につながります。

生活の質(QOL)を維持する

食事は、生活の質を大きく左右します。
自分の歯で、好きな物を気兼ねなく食べることは生きる喜びを与えてくれます。

訪問歯科の対象者

訪問歯科の対象者は一人で通院が困難な方です。
要介護状態区分による形式的な条件だけでは判断されません。
身体的・精神的な障害があり通院が困難な方も対象になります。
また、歯科・口腔外科のない病院に入院している場合も対象です。
歯科医師が患者さんの口腔内の状態を見て、通院困難で予防を含めた歯科治療が必要な場合、訪問歯科を行うことができます。

具体的には以下のような場合になると考えられます。
・要介護認定を受けている方
・高齢で歯科医院に通院困難な方
・寝たきりの方
・身体が不自由な方
・精神疾患がある方
・介護施設に入所している方
・歯科・口腔外科のない病院に入院している方

訪問エリア

訪問歯科は基本的に保険診療が適応します。
しかし、それには条件があり、訪問歯科を行える範囲は、原則「歯科医院から訪問先までが半径16km内」となっています。
もしも、本人や家族の希望で半径16kmを超える歯科診療所に往診をお願いすると、健康保険適応外となります。
ただし、16kmを超えていても以下の場合は保険診療が可能となります。
・16kmを超えても訪問歯科を行う歯科医院がない場合
・歯科医院があったとしても専門外などやむを得ない絶対的な理由がある場合

まとめ

お口の健康は、場合によっては後回しになりがちです。
しかし、お口の状態をしっかり管理することは、その後の生活の質や全身の健康に大きく影響します。
訪問歯科は歯科医療を必要としていながら受けることのできない人々に門戸を開く有益な方法です。
まずはかかりつけ歯科医に相談してみましょう。