2019(令和元)年における日本の平均寿命は男性81.41歳、女性87.45歳でした。一方、「健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間」である健康寿命は男性72.68歳、女性75.38歳であり、それぞれ約9年、約12年の差があります。
元気に健康で長生きしたい、と皆さん思いますよね。
「サルコペニア」や「フレイル」といった言葉を聞いたことがあるでしょうか?
サルコペニアとは「筋肉量が減少し、筋力や身体機能が低下している状態」であり、特に高齢者の身体機能障害や転倒のリスク因子になり得るとされています。一方、フレイルとは「加齢に伴い身体の予備能力が低下し、健康障害を起こしやすくなった状態」であり、介護が必要になる前段階ともされています。
サルコペニアとフレイルはお互いに関連しており、近年健康寿命の延長のためにはサルコペニアやフレイルへの対策が重要と言われています。
特に歯科の正解では、「オーラルフレイル」という言葉が注目されています。
今回は、オーラルフレイルというのはどのような状態か。その全身との関係と、対策についてお伝えします!
目次
・オーラルフレイルとは
・オーラルフレイルの診断項目
‐残存歯数
‐咀嚼困難感
‐嚥下困難感
‐口腔乾燥感
‐滑舌低下
・オーラルフレイルとサルコペニアの関連
・オーラルフレイルを防ぐために
・まとめ
オーラルフレイルとは
口は消化管の入り口であり、食べる・飲む・話す・笑う・呼吸する・・・などたくさんの機能があります。高齢になると他者との交流が少なくなり会話の機会が減ったり、人と食事をする機会が減り口腔の健康への関心が少なくなる方も多いです。その中で日常生活で何となく会話しにくかったり、噛めない食品が増えたり、むせやすかったりなどお口の機能が少しずつ低下する方が少なくありません。この状態をオーラルフレイルと呼びます。
口腔機能の低下は時間をかけて少しずつ起こるためご自身はあまり気にしていなかったり、加齢による仕方がないものと思っていることも多いです。
しかしこの状態を放置していくと、口腔機能だけでなく全身に様々な影響を及ぼすことが知られています。
口腔機能が低下すると、噛み応えのあるものが食べられなくなり栄養に偏りが生じたり、外出の機会が減り筋力や体力が低下したりするなど全身の健康に影響します。口腔機能の低下は要介護状態になるリスクを高めるのです。
一つ一つの症状は小さなもので、ゆっくりと進行するためご本人もそれほど気にしていなかったり、歳のせいと思っていることが多いですが早めにケアを行っていくことが健康寿命を延ばすために大切です。
オーラルフレイルの診断項目
オーラルフレイルとは、口腔機能の軽微な衰えが重複した状態です。以下の5つの評価項目のうち、2つ以上が該当するとオーラルフレイルとされます。
残存歯数
残存歯数は残っている自身の歯が20本以上あるかどうかで判断します。
日本では、80歳になっても20本以上の歯を残そうという8020運動が以前から提唱されています。ご自身の歯が20本以上あると、多くの食べ物をしっかり噛んで飲み込むことができるからです。歯が20本以下になると硬いものが食べにくくなり食事に片寄りが生じたり、食事が楽しくなくなり食事量が減るなどの影響が考えられます。
咀嚼困難感
咀嚼困難感は、半年前と比べて硬いものが食べにくくなったかどうかで判断します。
残っている歯の本数が少なくなったり、歯の状態が悪くなったり、噛む力が衰えたりすることで硬いものが噛みにくくなります。柔らかいものを好んで食べることで、さらに噛む力が衰えていくのです。
嚥下困難感
嚥下困難感は、お茶や水でむせることがあるかどうかで判断します。
高齢になると飲み込むための筋肉が衰え、むせやすくなる方が多いです。この筋肉が衰えていくと、水分や食べ物が肺に入り肺炎を起こすリスクも高くなります。
口腔乾燥感
口腔乾燥感は普段口の渇きが気になるかどうかで判断します。
高齢になると唾液腺の委縮や、飲んでいる薬の影響で唾液が減少し口腔乾燥に悩まれる方も多いです。唾液の減少により唾液の自浄作用が働かず口腔内の衛生状態が悪くなったり、食べ物を飲み込みにくさや、味覚が感じにくさを感じたりといった様々な弊害があります。
滑舌低下
滑舌は普段の会話で言葉をはっきりと発音できないことがあるかどうかで判断します。
高齢になると外出や人と会う機会が減り、口周りの筋肉を使う機会が減ることも原因の一つと考えられます。
オーラルフレイルとサルコペニアの関連
サルコペニアとは、「筋肉量が減少し、筋力や身体機能が低下している状態」です。
オーラルフレイルの症状が進行すると、食事が十分にとれなくなり栄養状態が悪くなったり、外出がおっくうになり人に会う機会が減少します。これによりサルコペニアのリスクが上がるのです。またサルコペニアが進行するとお口の機能はさらに低下していきます。
サルコペニアを予防するためには、オーラルフレイルに早期に対応し重症化させないことが大切です。
オーラルフレイルを防ぐために
オーラルフレイルを防ぐためには、日々の口腔ケアで口腔内の環境を維持しご自身の歯をしっかり残すことが大切です。
また、口腔機能の低下はゆっくり起こるため初期の段階でご自身では気が付きにくいことも多いです。歯科医院での定期健診では、むし歯の有無だけでなくお口の機能を評価することもできます。そのうえで患者さんに合ったお口のトレーニングやリハビリを提案します。是非定期健診でお口の状態をチェックしましょう。
まとめ
お口の健康はお口の機能は全身の健康に直結します!お口の機能の低下はサルコペニアやフレイルに繋がり、要介護へのリスク因子となります。
元気に長生きするためには、お口の機能をしっかりと維持することが不可欠です。日々のセルフケアももちろん大切ですが、歯科医院で定期健診を受けることでご自身では気が付きにくい不調に早期に対応することができます。
気になることがありましたら、是非お気軽にご相談ください!