口腔機能低下症という言葉を聞いたことがあるでしょうか?
その名の通り、噛む・飲み込む・話すなどのお口の機能が加齢や病気などの理由により衰えていく状態のことです。
お口の機能の低下は全身の栄養状態や筋肉量に影響し、その結果社会活動への参加や認知機能にも影響することが知られています。
健康に長生きするためには、お口の機能を維持することが欠かせません!
歯科では2018年に「口腔機能低下症」という病名が保健収載され、お口の機能の評価やそれに対するリハビリテーションなどを行うことができます。
お口の機能を維持するためには、唇や舌などお口周りを動かすための筋肉をしっかり使えることが不可欠です。身体の筋肉と同様に、使う機会が減ると筋肉は衰えていきます。
お口の機能を鍛えるための体操の一つに「パタカラ体操」があります。今回はパタカラ体操がどのようなものかについてご紹介します!
目次
パタカラ体操とは
舌や唇など口周りの筋肉が衰えると飲み込みがうまくいかずにむせやすくなったり、滑舌が悪くなり人との会話が億劫になってしまいます。
高齢化に伴い、近年このようなお口の機能の低下はオーラルフレイルと呼ばれ全身の健康に様々な悪影響を及ぼすことが危惧されています。
特に飲み込みの障害による誤嚥は誤嚥性肺炎に繋がり、命に直結する問題になります。
お口の機能の維持には、口周りの筋肉をしっかり動かして鍛えることが大切です!
パタカラ体操は誤嚥やむせの予防のために行う、嚥下訓練の体操の一つです。
パタカラ体操のやり方
◆発音の仕方
パタカラ体操は、しっかりお口周りの筋肉を動かして発音することが大切です。
- 「パ」は口を閉じてから大きく口を開けて発声しましょう。口をしっかり閉じる動きは食べ物を咀嚼するときや飲み込むときにしっかり口を閉じる力を養います。
- 「タ」は舌を上あごにしっかり付けて発音します。舌を上あごに押し付ける動きは食べ物を押しつぶしたり、飲み込むときに必要な力を養います。
- 「カ」は喉の奥をしっかり意識して発音します。食べ物を飲み込むとき、気管に食べ物が入らないように気管の入り口が閉まります。喉の奥を閉める筋肉を鍛えることで誤嚥を防ぐ効果があります。
- 「ラ」は舌を丸めるように発音しましょう。舌を丸める動きは、食べ物をまとめるときに必要な動きです。舌をしっかり動かす力を付けることで飲み込みがスムーズになります。
◆単音を連続で
パタカラ体操のはじめは単音を連続して発音します。パ・タ・カ・ラをそれぞれ10回ずつ、なるべく早い速度ではっきりと発音しましょう。
◆「パタカラ」を連続で
次にパタカラを連続して5回発音します。早い速度のままで、はっきりと発音することを意識しましょう。
◆「パタカラ」を含む文を
最後に「パタカラ」を含んだ文を発音します。例として以下のようなものがあります。
- パンダのたからもの
- タヌキがたのしくタンバリンをたたいた
- カラスがカアカアかきくけことないた
- ラッコがらんらんらっきょうをたべた
こちらもはっきりと発音することで、口周りの多くの筋肉を鍛えることができます。
パタカラ体操を行う注意点
◆使う筋肉をしっかり意識して行おう
パタカラ体操はいつもと同じようにパタカラを繰り返してもあまり効果がありません。身体の筋トレでも、使う筋肉を意識して行うことでより効果的なトレーニングができますよね。パタカラ体操でも同じように、その時に使いたい筋肉をしっかり意識してはっきり発音することでより効果的にお口の機能を鍛えることができます。
◆継続することが大切
パタカラ体操は数日行って効果があるようなものではありません。毎日しっかり継続することで少しずつ効果が表れるものなのです。
毎日食後に行う歯磨き習慣のように、1日3回の食前に行うなどタイミングを決めて行いましょう!
また一人でやるよりも、誰かと一緒に行う方がたのしく行うことができます。一緒に暮らすご家族がいる場合は、是非皆さんで行ってくださいね。
まとめ
お口の機能は健康で長生きするためにとても大切です。高齢になるとむせやすくなったり、硬いものが噛みにくくなったりすることは仕方がないと思っている方も多いと思います。
しかし、日々筋肉を鍛えることで70歳、80歳になっても元気に運動したり山登りやマラソンを楽しんでいる方も多くいらっしゃいます。
お口の筋肉も同様に、しっかりと使い鍛えることでその機能を維持して高齢になっても美味しく食事をとり人とコミュニケーションを取ることができます。
パタカラ体操は器具も不要で自宅で簡単に始めることができるトレーニングです。是非毎日の習慣として、取り入れてみてくださいね。