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2022.11.26 よく行われる治療だけど、実はとても難しい治療・感染根管処置

こんにちは
歯の神経の治療は、歯の神経が生きているかどうかで大きく異なります。
歯の神経が生きている場合は抜髄(ばつずい)という治療になりますが、歯の神経が死んでいる場合は感染根管処置という治療になります。
歯の神経がすでに死んでいるわけですから、感染根管処置の方が抜髄より簡単そうに思われるかもしれませんが、感染根管処置は抜髄よりも難しい治療です。
歯の神経がすでに死んでいるのに難しいと聞くと不思議に思われる方も多いことでしょう。
そこで今回は、感染根管処置についてご説明します。

歯髄を失った歯の特徴

歯髄を失った歯を失活歯(しっかつし)と言います。
感染根管処置についてご説明する前に、まず失活歯についてお話しします。

免疫力が作用しない

歯の神経は、正しくは歯髄(しずい)といいます。
歯髄には、歯の神経のほか、血管も通っています。
歯は、この血管から酸素や栄養を受け取って生きているわけですが、血管には他にも大切な役割があります。
それは、免疫系の細胞を運ぶという役割です。
歯髄を失った歯は、血管も無くなりますので、歯の内部は免疫力の作用しない空間になり、有害な細菌の活動を抑えられなくなってしまうのです。

歯肉が腫れやすい

歯髄を失った歯の歯肉が腫れることがあります。
歯周病で腫れることももちろんありますが、失活したことが原因で腫れることもあります。
失活歯の内部で増えた細菌が歯根から出て、根の周囲に膿が溜まり始めると、歯の周りの骨の中で膿が広がっていきます。
これを根尖性歯周炎、根尖病巣などとよんでいます。
根尖性歯周炎になり、根の先で膿が増えて、骨の中に収まりきれなくなると、歯肉が腫れたり、膿の出口を作ったりするようになるというわけです。

噛むと痛くなりやすい

歯の痛みというと、冷たいものや熱いものの痛みのほか、噛み合わせたときの痛みがあります。
噛み合わせたときの痛みは、歯の周囲、特に歯の根の先に炎症が起こったときに起こりやすい痛みです。
歯髄があった空間を根管といいます。
ここで細菌が繁殖すると、やがて歯の根の先から出て歯の周囲に広がり、やがて膿が溜まるようになります。
根尖性歯周炎、根尖病巣の発症です。
このとき、歯の周囲が膿によって圧迫されるのですが、このとき何かを噛むとここの圧力が高まります。
こうして生まれた圧力の結果、痛みを感じるというわけです。
なお、痛みまでは感じなくても、歯が浮いたように感じられることもありますが、同じ理由です。

感染根管処置とは

はじめのところでお話しした通り、感染根管処置は失活歯を対象とした治療です。
失活歯の根管の中から、細菌や汚染物を物理的に取り除くと同時に、消毒し、根管の内部から細菌をなくすことを目的としています。

感染根管処置の流れ

①根管の明示
感染根管処置は、まず歯冠の噛み合わせ面あたりから、歯を削り、根管を見つけるところから始まります。

②根管の清掃と消毒
根管が見つかったら、そこにファイルという細い針金のような器具を入れます。
根管は先に進むほど細くなるので、ファイルは髪の毛のようにとても細いものから、太いものまでさまざまなタイプがあります。
ファイルを入れて根管の清掃を行ったら、消毒の薬を入れて、仮封という仮の蓋をします。
これを何回か繰り返し、根管内の無菌化を図ります。

③根管充填
根管内が無菌化できれば、根管の内部をガッターパーチャという人工材料で詰める根管充填を行い、感染根管処置は終了となります。

感染根管処置が難しい理由

感染根管処置を受けても、症状の再発を繰り返しやすい理由についてご説明します。

すでに細菌感染が生じている

抜髄では、まだ歯の歯髄は生きていますので、歯髄部分は細菌感染を起こしていたとしてもわずかです。
ところが、失活歯はそうではありません。
治療が始まる前にすでに細菌に感染している上、根管の周りの壁の中にも細菌が入り込んでいます。
それをきれいに取り除かなくては感染根管処置は成功しません。
困ったことに、細菌だけでなく、細菌が入り込んでいる可能性のある壁の部分も目には見えません。
見えないところの治療ですから感染根管処置は、スタート地点から難しい治療になっているのです。

根管の形は複雑

歯の根管の形は、とても複雑です。
奥歯に至っては根管の数が3~4本にもなる上、前歯のようにシンプルな形をしていません。
曲がりくねった細い根管内には、器具を入れるのも大変です。
しかも、奥歯だけでなく、前歯にも、側枝というレントゲン写真には写らず、確認しようのない枝のような細かいところもあります。
このため、レントゲン写真ではきれいに根管治療ができたように見えても、実は側枝の部分に手が届いておらず、感染した部分が残ったままということもしばしば起こります。
感染根管処置を行なっても、症状を繰り返すようなときは、こうしたことが理由になっていることもあります。

免疫力が助けてくれない

感染根管処置の期間中は仮封をして日常生活を送っています。
治療中で根管内に消毒用の薬を入れて殺菌を図りますが、このときは殺菌できていても、仮の蓋なのですり減ったり、欠けたりして、隙間から細菌が入る可能性が否定できません。
根管内部に免疫力が働いてくれれば、多少細菌が入ってきても大丈夫なのでしょうが、そうではないので、なかなか効果が出にくいのも、感染根管処置の難しいところです。

無菌化の判断が難しい

感染根管処置の結果、根管内の無菌化できれば、根管充填を行い、細菌が入ってくる余地をなくします。
もし、無菌化ができていないと、根管内に細菌を残したまま、根管充填を行うことになりますが、無菌化ができたかどうかの判断がとても難しいのです。
根管内の細菌がいなくなったかどうか、根管の壁から汚染された部分が取り除けたかどうかを正確に判断する方法はありません。
現状では、根管内部が乾燥化し、滲出液(いわゆる汁)が認められなくなったら、無菌化できたと判断します。
また、根の先の膿が治ったかどうかの判断も、レントゲン写真を撮影しても、何ヶ月も経たないとレントゲン写真上の黒い影が無くならないので、すぐにはわかりません。
治療が成功したかどうかがわかりにくいのも、感染根管処置を難しくする理由のひとつです。

まとめ

今回は、感染根管処置についてお話ししました。
感染根管処置は、それ自体はとてもありふれた治療です。
しかし、
①すでに細菌感染が生じている
②根管の形は複雑
③免疫力が助けてくれない
④無菌化の判断が難しい
などの理由により、治療自体はとても難しいのが実情です。
感染根管処置を成功させるためには、失活歯や感染根管の専門的な知識だけでなく、経験も技術も必要です。
当院は、専門的な知識に加えて、長年に及ぶ豊富な経験と技術がある歯科医院です。
根の治療を繰り返し受けても、どうもしっくりとこない、歯肉の腫れを繰り返してしまう、などのお悩みのある方は、当院に是非お越しください。