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2024.4.8 訪問歯科診療は何をしているの?

歯医者に通うのが難しくても、歯医者がご自宅や施設に出向くことで訪問歯科治療が受けられることをご存じですか?

外出が難しい場合、筋力が低下したり、定期健診を受けられないことで病状が悪化している場合があります。そのような場合での口腔ケアは、歯医者に通って受けるような口腔ケアとは少し異なります。
今回は、訪問歯科診療での口腔ケアの方法とアイテムをご紹介します。

目次

◯訪問歯科診療とは
 ◆訪問歯科診療の対象者
◯通院が困難になった場合のお口の変化
 ◆歯周病の進行
 ◆むし歯の進行
 ◆歯を失い人工の歯が入っている
 ◆ドライマウス(口腔乾燥症)
 ◆嚥下障害
◯訪問診療での口腔ケア
 ◆準備するもの
 ◆お口のケアをするときのポジション
 ◆手順
 ◆入れ歯やお口の中の管理
◯まとめ

訪問歯科診療とは

訪問歯科診療は、歯科医や歯科衛生士が患者さんの自宅や施設などへ出向いて歯の治療や口腔ケアを行うことです。通常の歯科診療では患者さんが歯医者に行きますが、訪問歯科診療は高齢者や身体が不自由な方、または施設に入所している方など、外出が難しい患者に対して行われます。

◆訪問歯科診療の対象者

訪問歯科診療は、基本的には通院が難しい方が対象です。要介護状態区分等の指標だけで判断されるのではなく、歯科医師が患者さんごとに総合的に状態を判断するため一概には言えませんが、訪問歯科診療を利用できる方は以下のような方です。

・病気などにより身体が不自由な方
・障害があり、通院が難しい方
・寝たきりの方
・認知症等により、状況の判断をすることが難しい方

通院が困難になった場合のお口の中の変化とは

通院が困難になり、外出が少なくなった方のお口の健康は時に見過ごされがちですが、加齢に伴い歯周病は進行し、口の中は乾燥するようになり、食べづらさや飲み込みにくさを感じるようになります。
加齢に伴う高齢者のお口の変化について一つ一つお話します。

◆歯周病の進行

歯周病は歯ぐきや歯の周りの組織の炎症であり、歯を失う原因となります。
歯周病は治療を行い炎症が治まっても、歯を支える骨は溶けたら元に戻りません。
そのため、年齢を重ねるごとに歯ぐきが下がっていきます。
歯ぐきが下がれば歯と歯の間の隙間が大きくなったり、歯が長くなったりして汚れを落とすことが難しくなり、さらに歯周病が進行し、歯を失う原因となります。
さらに歯周病は心血管疾患(心臓病、動脈硬化など)、糖尿病、関節リウマチ、呼吸器疾患(慢性閉塞性肺疾患(COPD)や肺炎など)との関連性も指摘されているため注意が必要です。

◆むし歯の進行

歯周病が進行し、歯の根っこが露出すると、歯の根はむし歯になりやすいためむし歯が早く進行します。
また、甘いものをよく食べるなど食生活の乱れによりむし歯はさらに進行します。

◆歯を失い人工の歯が入っている

歯を失い、入れ歯やインプラントが入っているとそれらを特別な方法でケアする必要があります。
不適切な方法で管理をすれば人工の歯が壊れたり、自分の歯を失ったり、雑菌の温床になる場合があります。

◆ドライマウス(口腔乾燥症)

加齢や飲んでいる薬剤により、ドライマウスの症状が現れることがあります。
ドライマウスは唾液の不足により口の中が乾燥する状態で、歯周病やむし歯のリスクを増加させ、飲み込みづらくなるなど食事に影響を与えることがあります。

◆嚥下障害

嚥下障害とは、食べ物や液体を嚥下する(飲み込む)際に生じる障害で、飲み込みがうまくいかなくなる状態です。
加齢による筋力の低下、神経系の障害、認知機能の低下、特定の疾患(脳卒中、パーキンソン病、ALSなど)などが関与することがあります。飲み込みがうまくいかなければ、唾液や食べ物が細菌と一緒に気管に入り炎症を起こす「誤嚥性肺炎」のリスクが高まります。

訪問診療での口腔ケア

適切なお口のケアは、全身の健康に関わる重要な要素です。お口の中はプライベートな場所です。誰もが触られるのを嫌がりますが、歯医者で口の中の状態を診てもらい、介助が必要であれば介助させてもらいましょう。

◆準備するもの

・歯ブラシ
・歯間ブラシやフロス
・スポンジブラシ
・舌クリーナー
・口腔湿潤ジェルやマウスウォッシュ
・入れ歯ブラシや入れ歯洗浄剤

◆お口のケアをするときのポジション

お口のケアの介助において、歯みがきされる方の姿勢は重要です。正しいポジションをとれば、効果的かつ快適にケアすることができます。

・歯みがきをされる方のポジション

椅子や車椅子に座っている場合は頭や背中をささえるためにクッションを置きます。ベッドで寝ている場合は、頭をやや起こします。

・歯みがきをする方のポジション

介助者の腰や背中への負担がないような姿勢を心がけるため、可能であればベッドや椅子の高さを調節します。
十分な明るさの照明を用意し、口の中をよく見ることができるようにします。

◆手順

①まずはお互いリラックスするようコミュニケーションを取ります。
②取り外し可能な歯があれば取り外します。
③お口の中を観察し、乾燥しているようであればジェルやマウスウォッシュを使って汚れをふやかして浮かせます。
④歯ブラシで歯の表面の汚れを落とします。
⑤歯間ブラシやフロスで歯と歯の間の汚れを落とします。
⑥舌ブラシで舌の表面の汚れを優しく取ります。
⑦うがいができなければ、スポンジブラシで拭き取ります。
⑧入れ歯をブラシで磨き、洗浄剤につけます。

◆入れ歯やお口の中の管理

入れ歯の適切な使用とお口の中の管理も口腔リハビリテーションの一環です。入れ歯が合っているかどうかの確認したり、訴えがなくとも傷がついていないか、粘膜の状態は健康かを観察し、入れ歯と口腔内の両方を清潔に保つ必要があります。

まとめ

外出が難しい方にとって、口腔ケアを継続したり歯科治療を受けることは生活の質を向上させ、重要な役割を果たしています。
加齢や全身状態により、健康な若いころとはお口の中の状況も変化があります。
個々の状態に合わせた適切な口腔ケアを受けましょう。