歯の残っている本数が多いほど認知症になりにくいと聞いたことはありませんか?
「歯」と「認知症」の間にいったいどんな関係があるのでしょうか?
歯がなくなっても入れ歯で食事ができればいいやと思っていませんか?
実は、歯は食べ物を食べるためだけのものではないのです。
今回は「残存歯数(残っている歯の本数)と認知症」についてお話します。
目次
◯歯と認知症の関係
◆入れ歯を入れていたら大丈夫?
◯なぜ歯の本数と認知症発症リスクが関連するのか
◆社交的になる
◆しっかり栄養が摂れる
◆よく噛むことができる
◆歯の炎症が脳に影響を及ぼす
◯健康でいるためには、歯は何本あればいい?
◯歯を失わないためには
◆今の状況を知る
◆セルフケア
◆プロフェッショナルケア
◯歯を失ってしまった方は
◯まとめ
◯歯と認知症の関係
歯と認知症と聞くと、一見何の関係もないように思うかもしれません。
でも実は、残った歯の数が多い人は認知症の発症リスクが低い、という研究や、歯を失うことが認知症のリスクを増加させる可能性があるという研究は実際にいくつも出ているのです。
◆入れ歯を入れていたら大丈夫?
歯の本数が少なくなると認知症になりやすくなるなら、失った歯のところに入れ歯を入れておいたらいいと思うかもしれません。
それはあながち間違いではなく、歯の数が20本以上残っている人や、歯が少なくても入れ歯などの人工の歯を入れている人では、歯が少なくて入れ歯を入れていない人と比較して、認知症を発症するリスクが低いということがわかってきています。
では、なぜ歯が多く残っていると認知症を発症するリスクが低くなるのでしょうか。
◯なぜ歯の本数と認知症発症リスクが関連するのか
歯が多い場合と少ない場合では以下の点が異なることから認知症の発症に関係するのではないかと言われています。
◆社交的になる
歯の本数が多いほど交流する人数が増えると言われています。
歯がしっかりあると、自信を持って会話をしたりすることができ、生活の質を向上させます。社会的孤立を避け、家族や友人との社会関係の維持につながることが認知症の予防になると言われています。
◆しっかり栄養が摂れる
歯の本数が多いと野菜や果物をしっかりたべることができると言われます。
繊維質の果物や野菜は歯の調子が悪いとしっかり噛んで食べることができず、やわらかい炭水化物やお菓子に食事が偏ってしまうことがあります。
栄養不足は認知症のリスク因子の1つとして知られています。
歯がしっかりあると良い栄養状態となるため認知症を発症するリスクが低くなると言われます。
◆よく噛むことができる
歯を失うと、しっかり咀嚼することが難しくなり栄養不足になることはもちろんですが、しっかり咀嚼が行われることで、脳の血流や神経活動が促進され、認知機能を保つと考えられています。
◆歯の炎症が脳に影響を及ぼす
歯を失うような歯の周囲の炎症が口の中にある場合、その炎症により脳の血管が詰まったりダメージを受け、認知機能に悪影響を与える可能性も最近言われるようになってきました。
◯健康でいるためには、歯は何本あればいい?
厚生労働省と日本歯科医師会は「8020運動」を推進しています。これは「80歳になっても20本以上自分の歯を保とう」という運動です。
20本以上の歯があれば、食生活にほぼ満足することができると言われるため、「生涯、自分の歯で食べる楽しみを味わえるように」との願いを込めてこの運動が始まりました。
年々歯の残る本数は増えていく傾向にありますが、現在、平均20本以上歯が残っている年齢層は69歳までとなっています。
70歳以降では自分の歯が20本を切るということは、平均寿命を考えると歯の寿命が身体の寿命に追いついていないということになります。
歯が20本あるとないとでは、認知症のリスクはもちろん、転倒のリスク、要介護となるリスクも上がります。
まずは20本を一生残すことを目標にしてみてはいかがでしょうか。
◯歯を失わないためには
歯を失う原因は、むし歯と歯周病です。それらを予防するためにどうしたらよいでしょうか。
◆今の状況を知る
皆さんはご自分の口の中の状況がどのようになっているか知っていますか?
改善の第一歩は、まず自分の口の中の状況がどのようになっているのかを知ることが大切です。
今の病気の段階に合った治療法を選択すること、その状態から悪化させないことが大切です。
◆セルフケア
「セルフケア」とはおうちでのお口のケアのことです。
自分ではできていると思っていても、見落としのある部分もありますので、歯医者でチェックしてもらうとよいでしょう。
◆プロフェッショナルケア
「プロフェッショナルケア」とは、おうちで取りきれない汚れを落としたり、薬剤を使うことです。
「セルフケア」と「プロフェッショナルケア」は違うことをやっているので、どちらか一つでは効果は最大限発揮できません。
ぜひ治療と合わせて定期的なチェックとプロフェッショナルケアも受けてください。
◯もう歯を失ってしまった方は
しかし万が一、歯を失ってもしっかり人工の歯を入れれば、食べ物をかんだり、歯をくいしばって体幹を安定させたりという機能は保たれるので、ご自身に合った人工の歯を装着することが大切になると考えられます。
口の中は日々変化しているので、その歯が合っているか相談しながら定期的なチェックが重要です。
◯まとめ
認知症の発症にはさまざまな要因が関与するため、歯の状態だけでなく、生活習慣や遺伝など他の要因も考慮する必要がありますが、歯を残すことは、認知症予防の観点からも重要であると考えられます。
歯を多く残すことで健康な生活を送るため、また最期まで自分の口から美味しいものを食べられるように、ぜひかかりつけの歯医者にご相談ください。