歯周病菌は全身に巡ると聞いたことがありますか?
歯周病は口の中だけの問題だと思いがちですが、実は全身に影響を及ぼします。
そしてなんと最近では歯周病と心臓病の関係も指摘されています。
今回は歯周病と心臓病の関係と予防法についてお話します。
目次
◯歯周病とは
◯歯周病の全身への影響
◯歯周病と心臓病の関係
◆心臓病とは
◆歯周病によりリスクの上がる心臓病とは
◯心臓病を予防するお口の中のケアとは
◯まとめ
◯歯周病とは
歯周病は30歳以上の成人の80%がかかっていると言われ、歯についた細菌の塊である汚れによって歯肉など歯の周囲の組織に炎症が起きる病気です。
この炎症の正体は、細菌が身体に入らないように防御している免疫の働きです。細菌と免疫細胞の戦いにより、歯ぐきは腫れ、出血し、膿が出たり口臭の原因となります。
歯周病は初期の段階では歯肉炎と言い、歯肉が腫れたり出血をします。
進行すると歯周炎と言い、歯を支える骨が溶け、歯がぐらぐらになったり抜けたりします。
◯歯周病の全身への影響
歯周病の原因となる汚れの中にはたくさんの細菌が潜んでおり、それが血流にのって全身にめぐることで様々な影響を及ぼします。
歯周病になると、心臓病を始め誤嚥性肺炎などの呼吸器疾患、糖尿病、脳梗塞等になりやすいこともわかってきました。さらに最近では早産や低体重児、関節炎との関連も指摘されています。
◯歯周病と心臓病の関係
歯周病によって口の中に炎症が起こると、炎症性物質が血流に乗り、心臓に影響を及ぼす可能性があります。
◆心臓病とは
心臓病は、心臓に連結した血管の病気と心臓そのものの病気とに分かれます。
▶︎心臓の血管の病気
心臓の栄養血管である冠動脈の病気として、冠動脈が狭くなる狭心症、冠動脈が詰まってしまう心筋梗塞があります。
心臓を養う血管が詰まれば心臓に酸素が供給されなくなり、心臓の機能を失い死に至ることもあります。
心臓から出てすぐの太い血管である大動脈の病気として、大動脈にこぶができる大動脈瘤、大動脈の血管壁がはがれる大動脈解離があります。
大動脈が破裂すれば大出血が起こり、命の危険にさらされます。
▶︎心臓そのものの病気
心臓の4部屋を仕切る壁には逆流防止弁があり、この弁の働きが悪くなる弁膜症、心臓の筋肉の働きが損なわれる心筋症、さらに生まれつき4部屋の仕切りに穴が開いていたり、心臓にできる腫瘍などの病気があります。
また、心臓の機能の病気として、心臓の機能が果たされなくなった心不全、脈の乱れる不整脈があります。
どれも心臓のポンプとしての機能がうまく働かなくなり、全身に酸素をうまく送れなくなってしまい、様々な症状が出ます。
◆歯周病によりリスクの上がる心臓病とは
歯周病と心臓病の関係については、直接の因果関係はまだ明確ではありません。ただし、歯周病の炎症や感染が心臓病のリスクを増加させ、心臓病にかかる確率が高い可能性があると考えられています。
▶︎狭心症・心筋梗塞
歯周病菌は血流に乗り心臓にも移動し、血管に炎症を起こします。すると炎症を起こした部分の血管が硬くなり、動脈硬化を起こします。
また、血管内に炎症が起こると、血栓がつくられます。さらに、歯周病原菌自体が血小板を凝集させることから、血栓がつくられる可能性もあります。
これらが心臓を養っている冠動脈を狭くさせたり詰まらせたりすることで、狭心症や心筋梗塞へとつながるのです。
▶︎感染性心内膜炎
血流にのって運ばれた細菌が心臓の内側の膜や弁に感染して、炎症を起こすこともあります。これを感染性心内膜炎と言います。歯周病原因菌は、感染性心内膜炎を引き起こす細菌の一つと考えられています。
◯心臓病を予防するお口の中のケアとは
皆さんは歯みがきをする際に出血することはありませんか?
出血するということは歯ぐきに炎症があるということです。炎症のある歯ぐきをブラッシングすることで歯ぐきが傷つき、傷口から歯周病菌が血液中に侵入しやすくなることがあります。
心臓病は命にかかわることもあります。弁膜症や中隔欠損などもともと心臓の病気がある人などではとくに注意が必要で、お口の中を清潔に保つことが大切です。
歯みがきの時に出血しないと思っていても、歯ブラシが歯ぐきに当たっていないだけで歯周病は進行している場合があります。
定期的に歯医者に行き、歯ぐきの状態のチェックを受け、適切なケアを行いましょう。
ただし、アメリカ心臓学会は「歯周病と心臓病は何らかの関連はあるが、歯周病が心臓病を引き起こすとは証明されていないし、歯磨きが心臓病を予防するとも証明されていない。」という声明を発表しています。
◯まとめ
心臓病を予防するための歯周病治療はまだ科学的根拠がありませんが、もしかしたらこれから研究により実証されるかもしれません。
お口の中の炎症は放っておいていいことはありません。
健康な歯ぐきでは歯みがきの時に出血しません。出血すれば歯周病菌が血流に乗って移動する可能性があるため、定期的に歯医者に受診しましょう。